中国,現代の歴史学者。蘇州の人。1920年に北京大学を卒業後,厦門(アモイ)大学,中山大学,燕京大学,北京大学等の各教授や北平研究院の歴史組主任を歴任,また民俗学会,禹貢学会,辺疆研究会等を創設主宰し,《燕京学報》や《禹貢半月刊》《辺疆周刊》《大衆知識》《文史雑誌》等の主編となって活躍した。解放後は中国科学院歴史研究所の研究員となり,《資治通鑑》や《二十四史》の校定や句読の仕事に従事し,両書の定本作成に大きな足跡を残した。彼の学問は疑古派の流れをくみ,科学的基礎の上に立つ古代史の樹立を目ざして古典の再検討と研究を行い,つねに大胆な仮説と論証を展開して古代史研究を前進させた功績は多大である。また歴史のみならず歴史地理や辺疆地理研究にも新分野をひらき,民間歌謡や民俗学にも深い関心をもち,この方面の研究でも大きな成果をあげている。彼の古代史に関する業績は《古史弁》(7冊)の中に収められているが,今もなお高い評価をうけている。
執筆者:永田 英正
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中国の古代史学者。蘇州(そしゅう/スーチョウ)(江蘇(こうそ/チヤンスー)省)の人。北京(ペキン)大学でアメリカ帰りの胡適(こてき/フーシー)に心服し、師弟としての学問的交流のなかから、非科学的な従来の中国古代史を打破しようとする姿勢(疑古派)が生まれ、『古史辨(こしべん)』(全7冊)を出版した。とくに第1冊(1926)所収の「自叙」は、民族の危機の時代に誠実に生きた一研究者としての学問的遍歴の文章として多大の感銘を与え、日本語・英語にも翻訳されている。1929年に北京大学教授に迎えられてからは、論文「五徳終始説下の政治と歴史」を発表し秦漢(しんかん)時代の思想史に光をあてるとともに、歴史地理学雑誌『禹貢(うこう)』をも編集。1949年、中華人民共和国成立後は胡適批判を行い、また『資治通鑑(しじつがん)』および「二十四史」の校定作業の責任を負った。これらの成果は古典の定本として裨益(ひえき)すること多大なものがある。
[春日井明]
1893~1980
中国現代の歴史家。江蘇省蘇州の人。北京大学在学中,胡適(こせき)に師事。古文献を民俗学的立場から分析した。1930年代には禹貢(うこう)学会を組織。中華人民共和国成立後は中国史学会理事などを歴任した。代表著作に『古史辨』(こしべん)がある。
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…1934年3月1日創刊,半月に1冊発行され,日中戦争開始直後の37年7月の7巻10期まで続いた。燕京大学の顧頡剛(こけつごう),輔仁大学の譚其驤(たんきじよう)が中心となり,この雑誌に実証的な論文を寄せるとともに,禹貢学派という学派を形成し,中国の地理沿革史,歴史地図,地名辞典の作成を目ざし,大きな影響を与えた。谷霽光(こくせいこう),史念海,聶崇岐(じようすうき)ら多くの学者を生んだ。…
…この《尚書》のテキストが唐代以降公認されて広く行われるのであるが,実は付加された篇と注釈とが偽造であることが知られるのは明・清時代になってからである。近代精神の発達とともに弁偽の学も発達し,すでに明の胡応麟に《四部正偽》といった著述があるが,学問の方法として弁偽の姿勢を強くおしだしたのは,民国初年の顧頡剛ら《古史弁》によった擬古派の一派であった。偽文書【小南 一郎】
[東西偽書奇聞]
著者名や書名をいつわり,偽造・贋造された書物は〈偽書pseudograph〉と呼ばれ,別種の関心が払われる。…
…中国,顧頡剛(こけつごう)の編著書。一部羅根沢らの編著を含む。…
…第2は,おなじく胡適による《西遊記》《水滸伝》《紅楼夢》など元・明・清の古典小説の整理考証,また周作人らの北京大学歌謡研究会がおこなった民間に伝わる故事伝説歌謡などフォークロアの収集といった文学的研究。第3は,銭玄同や《古史弁》全7冊の著者顧頡剛(こけつごう)ら疑古派と称された人々によってなされた,伝統的歴史に対する批判精神にあふれる実証的な歴史研究。そして第4は,劉師培,張煊ら保守的学者が19年に発刊した雑誌《国故月刊》に色濃くみられる,白話(口語)文の流行,五・四新文化運動への心情的反発を主要な動機とする中国の伝統文化顕彰の作業――である。…
…しかし民間伝説,歌謡として独自に発展してゆく様相は,敦煌曲子,明代の戯曲や宝巻,清の鼓詞・子弟書などを通してうかがわれ,現在も民間伝説や歌謡の素材となって,漢族のみならずチワン(壮)族など少数民族のあいだにも伝播している。この孟姜女伝説の研究は,顧頡剛(こけつごう)らが中心となって行った中国民間文学研究の主要なテーマの一つであった。歴代の孟姜女伝説に取材した民間文学作品については,《孟姜女万里尋夫集》を見るのが便利である。…
※「顧頡剛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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