風神雷神(読み)ふうじんらいじん

改訂新版 世界大百科事典 「風神雷神」の意味・わかりやすい解説

風神・雷神 (ふうじんらいじん)

人間が怖れを抱くほどの偉大な力を見せる天然現象のうち,最も身近に起こり最も代表的な強風雷鳴とをそれぞれ神格化したもの。元来,別個に早くから尊崇され,中国では漢代の画像石に表される。日本でも級長津彦(しなつひこ)命と級長津比売(しなつひめ)命の男女の風神をまつる神社,霹靂(なるとき)神,鳴雷(なるいかずち)神,別雷(わけいかずち)神など,雷神をまつる神社が各地に見られるが,その像は造られなかった。一対の神々としては,仏教における千手観音眷属である二十八部衆傍らに表現される場合が多く,この場合,風神は風袋を,雷神は数個の小太鼓をそれぞれ肩より上方,あるいは頭上にささげる裸の力士形に表される。妙法院の蓮華王院(三十三間堂本堂にある鎌倉時代の木彫像(重要文化財)は彫刻の代表作で,建仁寺蔵の俵屋宗達筆《風神雷神図屛風》(国宝)と,これと同じ構図東京国立博物館蔵尾形光琳筆《風神雷神図屛風》(重要文化財)は,絵画の傑作である(図参照)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「風神雷神」の意味・わかりやすい解説

風神・雷神
ふうじんらいじん

風をつかさどる神と雷電をつかさどる神の一対。この二神が一対となって登場するのはもっぱら仏教美術のテーマとしてである。

 風神は十二天の一つの風天と同じで、風袋を両手で掲げて疾駆するその姿がカニシカ王の銅貨にみられる。また同王の金貨にはギリシア神話の風神アネモスの同様の姿がみられる。敦煌(とんこう)第249窟(くつ)の壁画には、これと同じ姿をした風神と身の回りに輪状に太鼓を連ねた雷神の組合せがみられる。日本では京都の蓮華王院(れんげおういん)本堂(三十三間堂)の彫刻、建仁(けんにん)寺の俵屋宗達(たわらやそうたつ)筆屏風(びょうぶ)絵に同系統の風神・雷神図(ともに国宝)がみられる。東京の浅草(せんそう)寺の大門には風神・雷神の像があるので雷門(かみなりもん)と称するようになった。

[定方 晟]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風神雷神」の意味・わかりやすい解説

風神・雷神
ふうじん・らいじん

風の神と雷の神。仏教では千手観音の眷属として二十八部衆とともに安置される。三十三間堂の鎌倉時代の木像と建仁寺蔵の俵屋宗達筆と伝えられる屏風は有名。東京,浅草寺の門にはこの2神が安置されているので雷門という。

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