千手観音の眷属で,千手観音を信仰するものを守る二十八部の護法善神。千手観音二十八部衆,観音二十八部衆などともいう。唐の伽梵達摩訳《千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼経》,唐の善無畏訳《千手観音造次第法儀軌》などに説かれているが,二十八の名称については諸経に多少の差がある。現存作例の中で最も著名な京都蓮華王院(三十三間堂)像を例示すると,(1)密迹(みつしやく)金剛力士,(2)摩醯首羅(まけいしゆら)王,(3)那羅延堅固(ならえんけんご)王,(4)金毘羅(こんぴら)王,(5)満善車(まんぜんしや)王,(6)摩和羅(まわら)王,(7)畢婆迦羅(ひつぱから)王,(8)五部浄(ごぶじよう),(9)帝釈天,(10)大弁功徳(だいべんくどく)天,(11)東方天,(12)神母(じんも)天,(13)毘楼勒叉(びるろくしや)天王,(14)毘楼博叉(びるばくしや)天王,(15)毘沙門天王,(16)金色孔雀王,(17)婆藪(ばすう)仙人,(18)散脂(さんし)大将,(19)難陀(なんだ)竜王,(20)沙迦羅(さから)竜王,(21)阿修羅王,(22)乾闥婆(けんだつば)王,(23)迦楼羅(かるら)王,(24)緊那羅(きんなら)王,(25)摩睺羅伽(まごらか)王,(26)大梵天王,(27)金大王,(28)満仙王とあり,さらに雷神と風神を加えて30尊により構成されている。画像では京都慈照院に二十八部衆像(2幅,重要文化財)があり,これにも風神・雷神が描き加えられている。
執筆者:関口 正之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
観音(かんのん)、とくに千手(せんじゅ)観音の従者をいう。その名称には異説があるが、金剛力士・梵天(ぼんてん)・帝釈天(たいしゃくてん)・四天王・八部衆・風神・雷神・弁才天・金毘羅(こんぴら)・婆籔(ばす)仙人などに六王・一大将・一天を加えた28の眷属(けんぞく)で、大乗仏教に出るおもな天部をまとめたものとなっている。京都の三十三間堂(蓮華王院(れんげおういん))にある彫像(国宝)は鎌倉時代のものとして有名である。
[石上善應]
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