食連星eclipsing binaryともいう。望遠鏡で見ただけでは一つの恒星だが,明るさを測っていくと周期的に減光し,その光度曲線の形から二つの星からなる連星の食現象による減光であることがわかる場合,食変光星という。つまり,連星の軌道面が地球の方向から見た視線に近いため,一方の星が相手の星の前面を通るときの食現象で,両星の合成光度が暗くなるのである。これまで4000個以上の食変光星が知られている。食変光星の変光は,公転する二つの星の食によって起こるので,1公転の間にふつう2回暗くなる。暗い星が明るい星の前面にきたとき,合成光度はぐっと下がり第1極小になり,反対に明るい星が前にきたときは,第1極小ほど暗くならないがやはり全体的には光度が下がり第2極小となる。しかし二つの星(主星と伴星)の光度がほとんど同じ程度のときは,第1極小と第2極小の差はなく同程度の暗さになる。また,伴星の光度が主星に比べ非常に暗いときは,第2極小はほとんど現れないこともある。図は代表的な食変光星の明るさの変化を示す。アルゴル型というのは,食を起こしていないときの明るさがほぼ一定のもので,代表星アルゴル(ペルセウス座β星,周期約2.87日)の名をとったものである。周期は数年からわずか1日くらいのものまであり,発見されている食変光星の70%はこの型のものである。食変光星の両星の間隔が狭くなると,引力による潮汐作用と自転の影響が重なって星の形状が球からずれて楕円体に近くなる。楕円体状の2星が食連星になっていると,公転につれて地球のほうへ向ける部分の面積も変わるので,食が起こっていないときでも,光度は緩やかに連続的に変化する。これがこと座β型とおおぐま座W型である。こと座β星(周期12.9日)を代表星とする食変光星では,両星の光度がかなり違うので第1極小と第2極小の差がはっきりしている。この型の周期は数十日から1日くらいまでである。両星の光度がほとんど同じで,第1極小と第2極小の深さが同程度の食変光星がおおぐま座W型で,代表星おおぐま座W星(周期0.33日)の名をとってつけたもので,周期はどれも1日以下と短い。この型の光度曲線は角ばったところがまったくなく,食の始りと終りさえはっきりしないのも著しい特徴である。食変光星の光度曲線の解析から連星軌道面の傾斜角,両星の半径,明るさの割合などがわかる。また,こと座β型やおおぐま座W型の食外光度曲線の変化からは,球からずれた両星の形状がわかる。食変光星(食連星)は分光器でスペクトルを観測すれば,そのまま分光連星となる。両者の間の本質的な違いはなく,観測手段が違うだけである。したがって分光連星としての食変光星の研究から,両星の性質がよくわかり,これをもとにして星の内部構造や進化を直接研究することもできる。
→近接連星
執筆者:北村 正利
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…新星は,実は新しい星が生まれたのではなく,ふだんは肉眼で見えないような暗い星が,突然数千倍あるいは数万倍も明るくなり,また元の明るさに戻るもので,変光星の一種である。ミラの発見以後17,18世紀には,アルゴルの名で知られる食変光星,ペルセウス座β星の変光の発見,ケフェイド変光星の代表であるケフェウス座δ星の変光の発見などあるにはあったが,この間変光星の数はほとんど増えなかった。19世紀に入ると,天体望遠鏡を使って暗い星まで系統的に変光星を探す試みがなされるようになり,変光星の数は急速に増加した。…
…一つは,連星の軌道傾斜角が比較的大きく,軌道運動による視線速度の変化に伴う恒星のスペクトル吸収線の波長の周期的変動が検出される場合で,これを分光連星(図2)という。もう一つは,軌道傾斜角が90゜に近く,両星が軌道運動しながら互いに相手を隠し合うことによって,周期的に減光が観測されるもので,これを食連星または食変光星という。 分光連星では,両星の視線速度変化が観測されている場合,他の手段により軌道傾斜角がわかれば,両星の軌道運動の実速度が得られ,これと軌道長半径との関係を用いて,両星の質量が導ける。…
※「食変光星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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