食道気管支瘻(読み)しょくどうきかんしろう(英語表記)Esophagobronchial fistula

六訂版 家庭医学大全科 「食道気管支瘻」の解説

食道気管支瘻
しょくどうきかんしろう
Esophagobronchial fistula
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 食道気管支の間に瘻孔(ろうこう)(あな))が形成され、唾液胃液が肺へ流れ、肺炎気管支炎を繰り返し起こす病気です。

原因は何か

 先天性の場合と、腫瘍や炎症により二次的に瘻孔が形成される後天性の場合があります。

 先天性の場合は、胎生期に食道と呼吸器が分離しますが、その発育、分離不全により食道気管支瘻が形成されたものです。最も多い形態は、口側の上部食道が途中で閉じていて(盲端(もうたん)という)、胃側の下部食道が気管とつながっている形です。この形の食道気管支瘻のある乳児の母親の6割は、妊娠時期に羊水過多を伴っています。

 この形態以外に、食道と気管支が細い瘻孔でつながっている場合(最も多いのは中部食道と右B6気管支)があります。

 二次的に形成される後天性の食道気管支瘻は、食道がんによる場合が多くみられます。がんが気管、気管支へ浸潤(しんじゅん)し、一部のがん組織が崩れ落ちたため、食道と気管、気管支に瘻孔が形成されます。

症状の現れ方

 先天性の場合は、飲み込んだ唾液や羊水が、上部食道が途中で閉じているので逆流して気管へ流れ込み、(せき)が出たり、チアノーゼ(皮膚や粘膜紫色になる)となります。また細い瘻孔の場合は、幼少時より繰り返して気管支炎肺炎を起こします。

 二次的に起こる、食道がんによる食道気管支瘻では、まず食事が詰まったり、胸痛などの症状が現れます。瘻孔が形成されると、食事をすると咳き込んだり、発熱などの肺炎症状が現れます。

検査と診断

 先天性のものは、胃ゾンデで口から挿入した管が胃のなかに入らなかったり、おなかが空気で張っていたりした場合に疑い、胸部・腹部X線検査で確定診断できます。細い瘻孔の場合は、水溶性造影剤による食道造影で初めて診断されます。

 二次的に起こるものでは、内視鏡検査で食道がんと診断し、水溶性造影剤を経口投与すると気管支、肺が造影されることにより診断します。瘻孔が小さい場合や、末梢の気管支との瘻孔の場合はCTMRIが必要となります。

治療の方法

 先天性の食道閉鎖を伴っているもの、瘻孔が大きいものは、胃瘻などをつくって全身状態が改善したあと、瘻孔を切除し、さらに食道閉鎖を伴っている場合は吻合(ふんごう)を行います。

 がんなど二次的にできたものでは、食道内にカバーのついたステントを挿入し、放射線治療、抗がん薬治療を行います。または、食事が違う経路を通過して胃内に入るようなバイパス手術を行います。

病気に気づいたらどうする

 先天性食道閉鎖を伴うものは、生まれた直後に診断されますが、妊娠時に羊水過多を伴っている場合は、超音波検査などで胎児のチェックをすることが望ましいと考えます。幼少時より、咳、発熱を繰り返す場合は、一度、食道造影の検査をすることをすすめます。

村田 洋子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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