(読み)ウマノハナムケ

デジタル大辞泉 「餞」の意味・読み・例文・類語

うま‐の‐はなむけ【×餞】

《昔、旅に出る人の道中の無事を祈って、乗る馬の鼻をその行く先へ向けてやったところから》旅立つ人の安全を祈り、前途を祝して、酒食をもてなしたり、品物を贈ったりすること。また、その品物。餞別せんべつはなむけ
藤原のときざね、舟路ふなぢなれど、―す」〈土佐

せん【×餞】

[名](スル)はなむけをすること。餞別。また、別れの宴。
「奝然上人の唐に赴くを―して」〈露伴・連環記〉

はな‐むけ【×餞/×贐】

《「馬の鼻向け」の略》旅立ちや門出を祝って、別れて行く人に金品詩歌などを贈ること。また、その贈り物餞別せんべつ。「―の言葉
[類語]餞別

せん【餞】[漢字項目]

[音]セン(漢) [訓]はなむけ
旅立つ人に贈り物をすること。はなむけ。「餞別予餞会

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精選版 日本国語大辞典 「餞」の意味・読み・例文・類語

はな‐むけ【餞・贐】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「うまのはなむけ」の略 ) 旅立や門出を祝って金品や詩歌などを贈ったり、送別の宴を開いて見送ったりすること。また、その金品・詩歌や宴など。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
    1. [初出の実例]「老父中御門へ罷候。はなむけに馬の手綱〈二懸〉遣候」(出典:言継卿記‐大永七年(1527)四月一八日)

せん【餞】

  1. 〘 名詞 〙 旅立つ人へのおくりもの。はなむけ。また、別れの宴。餞別。
    1. [初出の実例]「遠くまかりける人に餞し侍けるところにて」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)離別・一三〇六・詞書)
    2. [その他の文献]〔詩経‐邶風・泉水〕

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普及版 字通 「餞」の読み・字形・画数・意味


17画

[字音] セン
[字訓] はなむけ・おくる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は戔(せん)。〔説文〕五下に「去るものをなり」(段注本)とあって、送行の宴をいう。〔詩、風、泉水〕「(でい)(地名)に飮餞す」の〔伝〕に「(出行の祭)して舍(しやばつ)(出発式)す。其の側に飮酒するを餞と曰ふ」とあって、魂振り的な意味で行われるものであった。すべて迎えることを賓といい、送ることを餞という。

[訓義]
1. はなむけ、うまのはなむけ。
2. おくる、旅ゆく人をおくる、酒食もて送る。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕餞 馬乃牟介(うまのはなむけ)〔名義抄〕餞 オクリ・ムマノハナムケ・イツハル

[語系]
餞dzhiam、(進)tzienは声近く、〔爾雅、釈詁〕に「餞はなり」とみえる。進は鳥占(とりうら)によって進行を卜することをいう。(薦)tzian、祭tziatも声に通ずるところがあり、餞がもと儀礼として行われたものであることが知られる。

[熟語]
餞飲・餞餞宴餞行餞酌・餞春餞席餞送・餞別餞路
[下接語]
慰餞・寅餞・飲餞・宴餞・恩餞・餞・供餞・餞・傾餞・迎餞・言餞・郊餞・降餞・詩餞・賜餞・受餞・出餞・勝餞・盛餞・祖餞・送餞・餞・追餞・野餞・予餞・留餞・臨餞・礼餞・労餞

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