香ばしい(読み)コウバシイ

デジタル大辞泉 「香ばしい」の意味・読み・例文・類語

こうばし・い〔かうばしい〕【香ばしい/芳ばしい】

[形][文]かうば・し[シク]《「かぐわしい」の音変化》
よい香りがする。多く、食物ったり焼いたりしたときの、好ましい香りにいう。「―・いほうじ茶の香り」
見た目印象などがすばらしい。りっぱである。
薄色の衣のいみじう―・しきをとらせたりければ」〈宇治拾遺・一二〉
望ましく思う。心が引かれる。
「姿、みめありさま、―・しくなつかしきこと限りなし」〈宇治拾遺・六〉
[派生]こうばしさ[名]
[類語]芳しいかぐわしい匂う薫るくんずる匂わす鼻につく馥郁ふくいく芬芬ふんぷん

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精選版 日本国語大辞典 「香ばしい」の意味・読み・例文・類語

こうばし・いかうばしい【香・芳】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かうば〘 形容詞シク活用 〙 ( 「かぐわしい」の変化した語 )
  2. かおりがよい。においがよい。かぐわしい。
    1. [初出の実例]「大(はなはだ)(カウハシキ)味有り」(出典日本書紀(720)皇極三年三月(岩崎本平安中期訓))
    2. 「道気を檀林に受けて、香しき風、更に馥(カウバ)し」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)序)
  3. 見た目や心に受ける感じなどが、すばらしい。魅力的である。美しい。好ましい。りっぱである。徳が高い。
    1. [初出の実例]「かうばしき御音づれは、手の舞ひ足の踏まん所もおぼえず」(出典:六条修理大夫集(1123頃))
    2. 「母親が傍(そば)で、睨まれるのは余り香(カウバ)しくない」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)

香ばしいの語誌

( 1 )中古から用例が認められ、「かぐはし」の音が変化した形として、嗅覚的な美を表わす。
( 2 )中世から近世にかけては、嗅覚的な美のみならず、対象そのものから発せられる全体的な印象や感じが好ましくて、心がひかれるという「かぐはし」にもある意味や、一歩進んで、客観的にすばらしいといえる状態を表わす用例も見える。
( 3 )近代に入ると、派生的な美の意識よりも、嗅覚的な美を表わす原義での用法主流となり、挙例の「多情多恨」のような用法は「かんばしくない」の形で残される。

香ばしいの派生語

こうばし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

香ばしいの派生語

こうばし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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