警察署の下部におかれる警察の末端機構。巡査が駐在して担当区域内の犯罪予防や事務処理などに従事する。派出所が本署所在の市街地に設けられるのに対して,駐在所は本署から離れた周辺地域に設置され,警察官の住宅が付設されている。1888年10月制定の警察官吏配置及勤務概則にもとづいて,翌89年にかけて設置されたのが最初である。区(市)においては人口500~1500人,その他の町村では人口1500~3000人につき1人の割合で巡査が配置され,全国津々浦々まで,警察の網の目がはりめぐらされた。このような散兵警察制が採用される以前は,交通・産業の中心地に警察署をおいて,ここを拠点として巡査が管内を巡回する方法であった(集兵警察制)。村落駐在巡査は常時受持区域内を巡回し,戸口調査による日常的な住民監視や犯罪捜査,はては村内の苦情処理までを扱って,村長,学校長とならぶ村の〈名士〉として遇されてきた。駐在所は民衆のなかに配置された警察の哨所であり,地域支配の〈かなめ〉である。同時に,駐在巡査の人柄とも相まって住民との交流や民心の機微にふれることも多く,井伏鱒二《多甚古村》,伊藤永之介《駐在所日記》など,文学作品の素材ともなっている。設置当初は全国で約1万1000ヵ所,昭和戦前期には約1万4000ヵ所,1997年現在約8300ヵ所,2004年現在7592ヵ所がある。
執筆者:大日方 純夫
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警察署の下部機構の一つで、地域警察官(制服警察官)の活動拠点。交番とは異なり、居住施設が併設され、原則として1人の警察官が住み込んで勤務している。交番又は駐在所は、警察署の管轄区域を分けて定める所管区ごとに置かれており、駐在所は都市部以外に置かれる。駐在所に勤務する警察官は、所管区内のパトロールおよび各家庭・事業所等への巡回連絡を行うことを基本的な活動としている。地域の実態や住民の要望を把握して、地域住民の要望にこたえる活動を行うとともに、さまざまな警察事象に即座に対応することで、地域の安全の確保にあたっている。駐在所では、来た人から各種相談を受け、遺失届・拾得物の提出を受けるが、パトロールや巡回連絡を行っている間は、警察官は不在になる。このため、同居する家族が連絡等にあたっており、駐在所報償費が家族に支払われている。駐在所は、警察署から離れた町村部における警察事象に対応するために、日本で考案されたもので、1888年(明治21)制定の「警察官吏配置及勤務概則」に基づいて全国に設置された。2022年(令和4)4月の時点で、約6100か所設置されている。
[田村正博 2023年1月19日]
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…下部機構として,派出所(市街地。警察官2人以上が交代勤務),駐在所(僻遠地。警察官1人または複数を配置),巡回パトカー,特別の場合の警備派出所,検問所などがある。…
※「駐在所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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