公使(読み)コウシ(英語表記)minister

翻訳|minister

デジタル大辞泉 「公使」の意味・読み・例文・類語

こう‐し【公使】

国家を代表して外国に駐在し、外交事務を取り扱う職務。また、その人。大使に次ぐものとされ、普通は特命全権公使をいう。ほか弁理公使代理公使がある。
[類語]外交官大使領事

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「公使」の意味・読み・例文・類語

こう‐し【公使】

  1. 〘 名詞 〙
  2. おおやけの使い。
    1. [初出の実例]「兼承海道。公使繁多」(出典:続日本紀‐宝亀二年(771)一〇月己卯)
  3. 国を代表して外国に常駐する外交使節で大使に次ぐ階級。特命全権公使、弁理公使、代理公使の三つに分かれる。大使とは席次の点を除けばその職務と特権には相違がない。また、国際会議に派遣される代表団、または国際機関に常駐する代表部の上級職員の称号として与えられることがある。
    1. [初出の実例]「以国の公使ニグラに贈る文を」(出典:官板海外新聞(1861)文久元年一二月一二日)

おおやけ‐づかいおほやけづかひ【公使】

  1. 〘 名詞 〙 朝廷政府からの使者勅使
    1. [初出の実例]「おほやけづかひなれば、人々あまた尋ねて」(出典:輔親集(1038頃))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「公使」の意味・わかりやすい解説

公使 (こうし)
minister

一国から他の国へ派遣される外交使節団の長を意味する場合と,大使を長とする外交使節団において大使に次ぐ地位の者を意味する場合とがある。前者が本来の意味であるが,今日では前者の意味での公使はほとんど存在せず,公使の名称はおもに後者の意味に用いられる。19世紀のヨーロッパでは,外交使節団の長としては公使を交換するのが常であった。公使より一段低い外交使節を代理公使といい,公使より格の高い使節として大使が認められていたが,大使の交換は君主国等特定の国家間にのみ行われていた。以上三つの階級は,1815年のウィーン会議の際に正式に認められた。また,18年のエクス・ラ・シャペル会議において,公使と代理公使の間の階級として弁理公使が認められたが,これはその後使われなくなった。公使を代理公使等と区別するために特命全権公使と呼ぶことがある。大使および公使は一国の元首から他国の元首に対して派遣されるが,代理公使は外相から外相に対して派遣される。その後,外交使節を格上げする傾向が生じ,公使ではなく大使を外交使節団の長として交換する国が圧倒的に多くなった。日本が派遣している外交使節団の長も,現在は全部大使である。今日では公使は大使を長とする外交使節団の次席として派遣されるのが普通となった。この公使は大使の指揮下にあり,他の使節団員とともに,外交使節としての大使の務めを補佐する。大使館における席次は大使,公使,参事官書記官の順になる。
大使
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「公使」の意味・わかりやすい解説

公使【こうし】

正しくは特命全権公使。大使に次ぐ外交使節団の長。信任状を持ち国家を代表して他国に派遣され,その地位・職務・特権などは大使とほぼ同じである。最近では単に外交使節団の一員として,文化交流,通商など専門分野において大使を補佐するために派遣される例も多い。いわゆる代理公使は事務担当者であり,臨時代理公使は公使が不在・病気の際の代理者で,共に特命全権公使ではない。
→関連項目アグレマン高等弁務官

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公使」の意味・わかりやすい解説

公使
こうし
minister

(1) 外交使節団の長。一般には特命全権公使の略称として「公使」という語が用いられるが,公使にはほかに弁理公使代理公使がある。特命全権公使は,一国の元首によって,他国の元首に対して派遣され,接受国において派遣国を代表する権限をもつ。大使に次ぐ階級に属するが,席次および儀礼に関する以外は平等に取扱われる。第2次世界大戦以後,外交使節団の長としてはほとんどの場合,世界各国とも大使が派遣されるようになった。 (2) 外交職員の一職位。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「公使」の意味・わかりやすい解説

公使
こうし
minister

外交使節の一種で、正式には特命全権公使である。ほかに弁理公使、代理公使が認められるが、弁理公使は最近用いられない。公使は大使に次ぐ第二の階級の地位にあるが、両者の違いは席次や儀礼に関してのみであり、実質的な地位、職務、特権についてはなんら異ならない。第三の階級の代理公使は、派遣の手続において大使や公使と異なる。大使、公使の場合は、信任状は派遣国の元首から接受国の元首にあてられるが、代理公使の場合には、派遣国の外務大臣から接受国の外務大臣にあてられる。ただし、任務や特権の点で差異はない。また、代理公使も使節団の長であって、公使の代理(臨時代理公使)ということではない。

[広部和也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の公使の言及

【大使】より

…階級の区別は,常置使節の制度の一般化につれて行われるようになった。現在,常置使節には,大使のほかに特命全権公使と代理公使がある。公使は大使に次ぐ地位(特命全権公使のほうが代理公使より上位)であるが,大使との差異は,席次と儀礼についてのみ存在し,職務と特権については存在しない。…

※「公使」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android