鳥兜(読み)トリカブト

デジタル大辞泉 「鳥兜」の意味・読み・例文・類語

とり‐かぶと【鳥×兜/鳥甲】

舞楽襲装束かさねしょうぞくに用いるかぶり物。鳳凰ほうおうの頭をかたどり、厚紙金襴きんらん紅絹もみなどをかぶせて作る。曲により形式・色彩などが異なる。
キンポウゲ科多年草。高さ約1メートル。葉は手のひら状に深く裂けている。秋、深紫色の冠状の花が集まって咲く。また、ハナトリカブトなどを含め、トリカブト属の総称。塊根は猛毒であるが、漢方では主根烏頭うず側根附子ぶしといい、神経痛リウマチなどの鎮痛薬に用いる。かぶとぎく。かぶとばな。 秋》荒寥こうりょうと熊の湯ちかき―/秋桜子

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精選版 日本国語大辞典 「鳥兜」の意味・読み・例文・類語

とり‐かぶと【鳥兜・鳥甲】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 舞楽の常装束に用いるかぶりもの。鳳凰の頭にかたどって、錦や織物などで紙型にかぶせてつくり、頂が前方にとがり錏(しころ)後方に突き出たもの。〔塵袋(1264‐88頃)〕
    1. 鳥兜<b>①</b>〈舞楽図〉
      鳥兜〈舞楽図〉
  3. 紋所の名。をかたどって図案化したもの。鳥兜、変わり鳥兜などがある。
  4. キンポウゲ科の多年草。中国原産。茎は直立して高さ一メートル内外。塊状のよく発達する根がある。葉は互生し有柄で掌状に深く三裂し、側裂片はさらに二裂して縁は欠刻状。秋、枝先や上部の葉腋に円錐状の花序をつけ、深紫色の兜状の花を多数開く。切り花用などに栽培される。また、ヤマトリカブトなど本種に似た種類が日本に多数野生し、一般に猛毒があり神経を麻痺させるが、漢方では根を烏頭(うず)・付子(ぶし)などといい、鎮痛・興奮・強心薬に用いる。花の形がに似ているのでこの名がある。漢名、烏頭。かぶとぎく。かぶとばな。《 季語・秋 》 〔訓蒙図彙(1666)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「鳥兜」の意味・わかりやすい解説

鳥兜 (とりかぶと)

舞楽および能のかぶり物。舞楽では《鳥甲》とも書く。形状は鳳凰(ほうおう)の頭をかたどったとされ,頂が前方にとがり,錏(しころ)が後方に突き出したもの。舞楽の鳥兜は厚紙を素材とし,その表に赤・緑・紫の金襴を張り,縁を組紐でとじ,側面に丸に五七の桐の透し彫を施した円形金銅金具をつけ,八つ打ちの紐をあご下で結ぶ。裏には紅絹(もみ)が張ってある。管方(かんかた)の常装束として用いるほか,《万歳楽》《承和楽》《北庭楽》《甘州》《裹頭楽(かとうらく)》《一曲》《振鉾(えんぶ)》《延喜楽》《仁和楽》などに用いる。能の鳥兜も舞楽のものと同型で錦で作られる。《白髭(しらひげ)》《大社(おおやしろ)》《道明寺》《梅枝(うめがえ)》《富士太鼓》などのシテに用いる。民俗芸能の中にも神楽,王の舞などに鳥兜を使用するものがあり,《三十二番職人歌合》に千秋万歳が鳥兜をつけて舞っている姿がある。
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動植物名よみかた辞典 普及版 「鳥兜」の解説

鳥兜 (トリカブト)

学名:Aconitum chinense
植物。キンポウゲ科の多年草,園芸植物

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世界大百科事典(旧版)内の鳥兜の言及

【舞楽装束】より

…(12)烏皮沓(うひぐつ∥くりかわくつ) 曲目によって牛革で作られた種々の沓があり,《胡飲酒》《新靺鞨(しんまか)》《採桑老》,また〈久米舞〉等で用いられる。(13)頭装 兜(甲)(かぶと)は通常多く用いるものに鳥兜(甲)(とりかぶと)がある。厚紙に金襴を張り,鳳凰の頭にかたどったといわれる華麗な甲で裏は紅絹,左方,右方の別がある。…

※「鳥兜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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