一つの活版組版と同じもの(鉛版)を多数作るとき用いる紙製の雌型。通常,紙型用紙といわれる材料を組版の上にのせて圧力を加えて作る。湿式紙型(ウェットマットwet mat)と乾式紙型(ドライマットdry mat)とがあり,前者は乾燥しないように保存された紙型用紙を活版組版の上にのせ剛毛の打ち刷毛(はけ)でたたいて作るので〈たたき〉とも呼ばれる。現在,乾式紙型が多用される。乾式紙型は数十層を抄き合わせた特殊なドライマット原紙という厚紙をあらかじめ湿して軟らかくし,プレスで活版組版に押しつけて成形する。プレスには,平圧式といって平らに圧力を加える機械と,ローリング式といって円筒の下を通すことによって圧を加える機械の2種類がある。平圧プレスでは熱圧をかけるが,ローリングプレスは熱を用いず冷圧で,のちにフォーマーという乾燥機で乾かす。このとき紙型はすでに活版組版から分離されているので収縮が起こり,この紙型に鉛合金を流しこんで作った鉛版は,もとの活版組版よりもやや小さいものができる。紙型鉛版方式で色を重ねて刷ることのむずかしい一つの原因である。また,鋳造のとき,文字のない部分(非画線部)は鉛合金の圧力でゆがむので,あらかじめ,この部分の紙型の裏に厚紙をはりこむ。この操作は手工的でめんどうなので,この作業を不要としたノンパックマットが考案された。紙型を平らな状態のまま鉛合金を流せば平鉛版ができ,湾曲させた状態で鉛合金を流せば輪転機用の丸鉛版ができる。紙型は軽量で運搬,保存に便利なので,再版用として出版社では大事に保管する。
執筆者:山本 隆太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
活字組版など凸版の複製版をつくるときに使う厚紙の母型。紙型原紙は、貼(は)り合わせ、あるいは抄(す)き合わせてつくった厚紙で、版の模様を忠実に再現するために必要な塑性、平滑性、耐熱性、強度を備えている。紙型にはパック紙型とノンパック紙型とがあり、前者は型取りしたのち、裏にパック、すなわち紙で部分的に裏張りの補強をする必要がある。後者は原紙が厚く(1.4~1.8ミリメートル)、多少高価であるが、紙型取り後も裏が平らでパックの必要がない。紙型をつくるには、複製しようとする版面上に紙型原紙を置き、紙型取り機を用い、強圧加熱してつくる。この作業には乾式法と湿式法があるが、現在はほとんど乾式法である。この紙型に溶融した鉛合金を流し込んで鉛版、すなわち複製版をつくる。輪転印刷機では活字を取り付けられないから、いったん紙型をとり、丸鉛版にして印刷機に取り付ける。紙型は軽く、かさばらないので、保存版として使われる。
[平石文雄]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…英語ではステレオタイプstereotypeといい,同型の版の意味で,日本でも俗にステロまたはステロ版ともいって,ごく少部数の活版印刷物を除いて,この複製版を利用することが多い。原版(活字組版)に紙型用紙を圧して作った紙型に,320℃くらいに加熱し溶融した鉛合金を流し込んで冷却固化したものを,印刷機にかけるのに便利な形に仕上げる。形状の点から2種に分類され,輪転機にかける半円筒状のものを丸版(まるばん)または丸鉛版といい,輪転機以外の活版印刷機にかける平板状のものを平版(ひらばん)または平鉛版という。…
※「紙型」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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