鴫焼(読み)シギヤキ

デジタル大辞泉 「鴫焼」の意味・読み・例文・類語

しぎ‐やき【×鴫焼(き)】

ナス切り口に油を塗って焼いたものに練り味噌をつけ、再びあぶったもの。油で揚げて練り味噌をつけることもある。ナスに枝を挿して鳥の「」の頭の形につくったところからの名称 夏》

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精選版 日本国語大辞典 「鴫焼」の意味・読み・例文・類語

しぎ‐やき【鴫焼】

  1. 〘 名詞 〙 材料に油を塗って焼く料理法でナスが代表的。ナスを縦に二つに割り、串を通して両面胡麻油(ごまあぶら)を塗って焼き、練り味噌を塗ってさらに焼いたもの。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「鴫炙や茄子なれどもとり肴〈徳元〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「鴫焼」の意味・わかりやすい解説

鴫焼 (しぎやき)

ナスのみそ田楽の別称。江戸での呼称であったことが《料理網目調味抄》(1730)などに見える。もともとはシギそのものを焼いた料理であったが,きじ焼キジ焼物から豆腐,さらには魚の切身の焼物へと変化したのと同様,ナスの料理へと変わったものである。室町後期の《武家調味故実》に〈しぎつぼ〉という料理があるが,これは塩漬にしたナスの内部をくりぬいて壺状にし,そこへシギの肉を切って詰め,カキの葉で蓋(ふた)をして,酒で煎(い)るというもので,シギのくちばしを蓋にさして供した。これが第1の変化で,シギの肉にナスを取り合わせる形になったが,さらにこれがまったくシギを用いぬナス料理へと変わる。すなわち,室町末期ころのものと思われる《庖丁聞書》の〈鴫壺焼〉は,生のナスを料理して,その上に木の枝でシギの頭をつくって置くというものであった。シギは単に飾りになってしまったのだが,さらに江戸時代に入ると,その飾りさえ省かれてしまうのである。現在しぎ焼というと,油で焼いてみそを塗った料理一般の称で,ナスのそれが代表的なものとする説が多いが,《料理物語》(1643)のそれは,ゆでたナスにサンショウみそをつけて焼くものだとしている。油を使って焼くのはその後の変化で,前記の《料理網目調味抄》あたりから見られるようになる。なんらかの理由があってシギからナスへの変化が起こったはずであるが,それを説明してくれる資料は見あたらない。
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百科事典マイペディア 「鴫焼」の意味・わかりやすい解説

鴫焼【しぎやき】

ナスの料理法の一つ。くりぬいたナスの中に鳥のシギの肉を入れて焼いた料理から生じた名という。ナスを縦二つまたは厚めの輪切りとし,植物油を塗って焼き,練りみそをつけて食べる。なお鍋(なべ)に油を入れて輪切りナスをいため,砂糖,醤油,みそで調味したものを鍋しぎと称している。
→関連項目ナス

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世界大百科事典(旧版)内の鴫焼の言及

【ナス(茄∥茄子)】より

…ナス科の一年草(熱帯では多年草)で,ナスビともいう(イラスト)。果実を食用とする重要野菜である。インドの原産で熱帯から温帯地方に広く栽培される。中国での栽培はきわめて古く,《斉民要術》にすでに栽培,採種について記載されており,千数百年の歴史を有する。アラビア,北アフリカ地方には5世紀前後にペルシア人によって伝えられた。日本への渡来年代は不明であるが,最古の記録として,正倉院文書に〈天平勝宝2年(750)6月21日藍園茄子を進上したり〉とあり,また《延喜式》の記述内容からも,古くから栽培され重要な野菜であったと推定される。…

【焼物】より

…魚貝類,鳥獣肉,野菜などを焼く料理。材料を直接火にかざすなど,加熱のための容器をかならずしも必要としない最も原初的,基本的な調理法である。日本では古く〈あぶりもの〉といい,〈炙〉の字を用いた。平安時代から宮廷の供宴などに多く見られるのは包焼き(裹焼)(つつみやき),別足(べつそく),ぬかご焼きである。包焼きは,《万葉集》に〈裹める鮒(ふな)〉などと見え,濡らした葉などでフナを包んで焼いたとも考えられるが,室町期の《庖丁聞書》や《四条流庖丁書》には,フナの腹に結び昆布,串柿(くしがき),ケシ,クルミ,焼栗などを入れて焼き,あるいは煮るものとしている。…

※「鴫焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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