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鶴の巣籠 つるのすごもり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

鶴の巣籠
つるのすごもり

邦楽の曲名。 (1) 尺八楽の古典本曲の曲名。作曲年代未詳。古くから各地の虚無僧寺に伝えられ,京都の明暗寺伝,浜松の普大寺伝,奥州の布袋軒伝,琴古流伝 (正式名『巣鶴鈴慕』) などをはじめ同名異伝が多い。普化 (ふけ) 尺八曲中例外的な描写曲でつるの親子の愛情を描く。タバネという技巧的手法が特色。 (2) 胡弓の楽曲名。 (a) 『摂陽奇観』 (1777) に政島検校が『巣籠』を演奏した記録があり,これを森岡正甫の文化8 (1811) 年刊『掃弓雅吟集』には「巣籠曲」「真の巣籠曲」などと記されている。 (b) 本居宣長門下の藤井高尚著『弾物のさだめ』 (1808) に,宇伝佐喜検校が京都で『鶴の巣籠』を演奏したとあり,現在名古屋,京都,大阪などでは多少異なる演奏があり,腕崎検校作曲とも,あるいは天保 (30~44) 頃大坂の巌得の明暗流尺八曲からの移曲とも,あるいは自身の作曲とも伝えられるが確証はなく,尺八曲との先後関係も未詳。2段から成るものは『八千代獅子』または『三段獅子』を前奏とすることもあり,三弦で「砧地」「巣籠地」を合せる。 (c) 江戸では宝暦 (1751~64) 以来藤植流に伝承される曲があり,現在も山室保嘉,千代子と伝承されたものがその門弟たちによって演奏されている。前弾き,前唄,合の手,4段構造の手事,後唄という構成で,箏の「巣籠地」を合奏させる。 (3) 地歌箏曲としては,久幾勾当が慶応4 (1868) 年に三弦手事物として作曲したものがあり,これを駒仲検校がさらに箏に移したといわれる。

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世界大百科事典 第2版の解説

つるのすごもり【鶴の巣籠】

尺八楽古典本曲および胡弓楽本曲の曲名。《鹿の遠音》とともに古くから尺八曲の代表的存在として一般人にもよく知られた曲であるが,尺八楽の流派による同名異曲が非常に多くあり,胡弓曲も同類である。また,尺八楽の琴古流・上田流の《巣鶴鈴慕(そうかくれいぼ)》,明暗対山流の《巣鶴》などのように曲名の異なるものもある。それらの間の異同の程度はさまざまで,相互の伝承または影響関係は必ずしも明らかではないが,いずれも雛鶴の誕生から親鳥の愛情,子鶴の巣立ちを経て親鳥の死にいたる一連の物語を共通の曲想としており,大なり小なり似通った音楽的特徴をもっているから,同一原曲から種々の同工異曲が生じた可能性が濃い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鶴の巣籠
つるのすごもり

尺八および胡弓(こきゅう)本曲の曲名。通称「巣籠」。尺八琴古流(きんこりゅう)本曲名は『巣鶴鈴慕(そうかくれいぼ)』。擬音を駆使した奏法と、鶴の子育てから巣立ちまでの、親子の情愛をテーマとした一種の標題音楽。『鹿(しか)の遠音(とおね)』と並ぶ破手(はで)の曲で、宗教性を重視する尺八本曲のなかでは特異な存在。この曲は伝承的に「東北系」と「関西系」に二分され、東北系『鶴の巣籠』は伝承地東北地方特有の細かい技巧をもつ無拍リズムの本曲様式を踏まえる。関西系のそれは、地歌(じうた)の巣籠地「ツルテン」の音型を出現させて、拍節的旋律が随所に聞かれるという特徴をもつ。また胡弓では、流派・系統によって違いはあるが、胡弓曲中唯一といってよい独奏主体の本曲になっている。[月溪恒子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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