インドの仏跡。詳しくは仙人住処(せんにんじゅうしょ)鹿野苑(サンスクリット語でリシパタナ・ムリガダーバ)といい、「宗教者の集まる鹿(しか)の放し飼いされている園林」という意である。現在はインドの聖地ベナレス(ワーラーナシ)の北東10キロメートルのサールナートにあたり、釈迦(しゃか)が悟りを開いてのち最初に説法した(初転法輪(しょてんぼうりん))場所として、仏教四大聖地の一つとして尊ばれている。ここから紀元前3世紀にアショカ王の建てた石柱が発見され、その柱頭の4頭のライオン像はインドの国章、台座の法輪は国旗として使われている。そのほか直径28メートルのダメーク塔(6世紀)やアショカ王によって建造されたダルマラージカ塔の遺跡があり、博物館には出土の遺品が陳列されて圧巻である。
[森 章司]
古代インド,カーシー国にあった園林で,釈迦が悟りをひらいた後,初めて説法(初転法輪)を行った場所。サンスクリットのムリガダーバMṛgadāva(パーリ語でミガダーヤMigadāya)の漢訳。現在のサールナート(〈鹿の王〉の意)にあたる。経典によればこの初転法輪の地は自然に恵まれ,古くから神仙の住む所とされていたという。地名の由来については,当地の王がこの森で狩りをし,一度捕らえた鹿をあわれんで放したという故事が伝えられている。仏教の四大聖地の一つとして寺院も建立され,栄えていたさまは《大唐西域記》にも描かれているが,13世紀ころイスラム教徒の侵入により廃墟となった。
→サールナート
執筆者:高橋 明
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…北インドのワーラーナシーの北6kmにあり,釈迦が初めて説法した聖地として四大仏跡の一つに数えられている。漢訳仏典では鹿野苑(ろくやおん)。発掘の結果,アショーカ王(前3世紀中葉)の頃から12世紀までの遺址と多数の彫刻が出土し,ダルマラージカー塔と根本精舎を中心にグプタ時代に最も栄えたことが明らかになった。…
※「鹿野苑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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