サールナート(読み)さーるなーと(英語表記)Sarnath

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サールナート」の意味・わかりやすい解説

サールナート
さーるなーと
Sarnath

インド北部、ワーラーナシベナレス)市郊外にある仏教遺跡。サールナートはシャーランガ・ナータという菩薩(ぼさつ)名の転訛(てんか)といわれ、漢訳仏典の鹿野苑(ろくやおん)のことで、鹿(しか)が多く住んでいたのにちなんで名づけられたものと思われる。ここは、ブッダガヤ釈尊が成道(じょうどう)して最初に訪れ、5人の比丘(びく)に説法した所、つまり初転法輪(しょてんぼうりん)の地として名高い。今日ではダメーク・ストゥーパ(高さ43.6メートル)をはじめグプタ朝僧院址(し)が発掘されたままの状態で残り、遺跡に隣接した博物館にはアショカ王建立の柱頭ライオン像や、グプタ朝の初転法輪を表した有名な仏陀(ぶっだ)像をはじめ、多くの石像が陳列されている。また1931年に建立された寺院には日本の野生司香雪(のうすこうせつ)(1885―1982)の筆になる仏伝の壁画がある。

[永井信一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サールナート」の意味・わかりやすい解説

サールナート
Sārnāth

インド北部,ワーラーナシの北 6kmにある仏教遺跡。鹿野苑 (ろくやおん) Migadāyaとも称する。釈迦が初めて説法を行なった転法輪聖地。 1908~28年に行なわれた調査で多くの祠堂,塔,僧院などの存在が明らかとなった。ダルマラージカ・ストゥーパはアショーカ王時代に基礎を置いている。その近くから見出されたアショーカ王石柱の柱頭は4頭の丸彫獅子からなり,インド国旗に描かれている。グプタ朝のダメク・ストゥーパなどもある。

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