改訂新版 世界大百科事典 「フラックス」の意味・わかりやすい解説
フラックス
flux
溶剤,融剤,または媒溶剤とも呼ばれる。おもに,酸化物,塩化物,フッ化物からなる物質で,鉱石を製錬する際に用いられる。冶金学上の用語で,明確な定義はない。フラックスは鉱石の溶解を促進し,鉱石に含有される不純物の脈石成分と化合してスラグとなる。鉄鉱石の製錬では石灰石がフラックスであり,得られる銑鉄の成分に影響を及ぼす。金属の溶解のときに使用されるフラックスは,溶解の際の酸化防止,溶融金属表面のスラグの諸性質変更,非金属介在物の除去,脱ガスなどが目的である。金属の連続鋳造で使用されるものは,非金属介在物の除去,酸化防止,そのほか熱伝達に関係して鋳塊の表面状態に大きい影響を及ぼす。はんだ付け,鑞付け,溶接,溶融めっきに使用されるものは,接合される金属の接着面の酸化物を除去し,金属のぬれ性を改善して接合を完全にすることに寄与する。
執筆者:佐藤 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報