黄氏体(読み)コウシタイ

デジタル大辞泉 「黄氏体」の意味・読み・例文・類語

こうし‐たい〔クワウシ‐〕【黄氏体】

中国花鳥画の一様式黄筌こうせんに始まるもので、鉤勒塡彩こうろくてんさい特色とする精細華麗な画風富貴体。→徐氏体じょしたい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「黄氏体」の意味・読み・例文・類語

こうし‐たいクヮウシ‥【黄氏体】

  1. 〘 名詞 〙 中国、五代蜀の画家黄筌(こうせん)によって創成された画体。明確な描線と濃い色彩を用いる装飾的な写生画風で、北宋画院の様式となり、花鳥画の典型とされた。→鉤勒(こうろく)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「黄氏体」の意味・わかりやすい解説

黄氏体【こうしたい】

中国,五代の黄筌(こうせん)に始まる花鳥画の二大様式の一つ鉤勒(こうろく)の技法を用い,明確な輪郭と豊かな彩色特徴とする装飾的画風で,徐氏体に対し〈富貴の体〉とも呼ばれて,北宋画院で採用された。
→関連項目院体画崔白徐煕陸治

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「黄氏体」の意味・わかりやすい解説

黄氏体 (こうしたい)

中国の花鳥画に関する様式用語の一つ。五代の画家,黄筌とその一派起源をもつ画風をいう。黄筌は蜀(四川省)の人で,蜀滅亡後,宋都汴京(べんけい)に一族とともに赴き,ほどなく没した。子供の黄居寀(こうきよさい)(933-?)・黄居宝らがその華麗な画風を継ぎ,それは北宋院体花鳥画の主導的様式となった。輪郭線で対象をくくり,色彩を塡(う)める〈鉤勒塡彩(こうろくてんさい)〉の技法と結びついた装飾的な花鳥画には,後世まで黄氏体の呼称が用いられる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄氏体」の意味・わかりやすい解説

黄氏体
こうしたい

中国の花鳥画の画法の一つ。鉤勒填彩(こうろくてんさい)画法、すなわち輪郭を明瞭(めいりょう)に描いて濃い色彩を施す装飾的な写生画法で、徐氏の始めた徐氏体と並んで中国花鳥画の二大画風の一つとなっている。五代蜀(しょく)の黄筌(こうせん)が始め、その子の黄居寀(こうきょさい)、居宝ら黄家一族が北宋(ほくそう)の画院に入って画院の花鳥画体としたのでこの名がある。おもに画院で行われ、伝統となり、富貴の体(たい)と評された。わが国の室町末から桃山時代の花鳥画にも、明(みん)代の花鳥画を通じて影響を与えている。

[星山晋也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の黄氏体の言及

【花鳥画】より

…しかし独立の部門として本格的に成立したのは五代からで,蜀に黄筌(こうせん),南唐に徐熙(じよき)が出,花鳥画の二大源流をなした。黄筌と子の黄居寀(こうきよさい)らの黄氏体は,鉤勒塡彩(こうろくてんさい)法を用いて華麗な富貴さに特色があり,徐熙と孫の徐崇嗣らの徐氏体は,水墨と没骨(もつこつ)画法を取り入れて瀟洒な野逸さに特色があった。次に北宋の画院では,初め黄居寀が勢力を振るい黄氏体が指導様式となったが,しだいに趙昌,易元吉,崔白などの写生画法が採用され,末期の徽宗画院は,写実を重視した徐黄折衷の院体画を成就した。…

※「黄氏体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android