本尊の薬師如来は木造坐像(像高一二四センチ)で、基本部は桂の一木で刻まれている。胎内に貞観四年(八六二)一二月の墨書銘があり、在銘木彫仏像ではわが国最古のものである。また造立にあたっての施主名として額田部・保積部・宇治部・物部の四姓が記されており、これが当地一帯に在住していた人々であったとすれば、延暦二一年の
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岩手県奥州(おうしゅう)市水沢(みずさわ)区黒石町にある天台宗の寺。山号は妙見山(みょうけんざん)。「くろいしでら」ともいう。729年(天平1)行基菩薩(ぎょうきぼさつ)の開基と伝える古刹(こさつ)で、東光山薬師寺と称していたが、延暦(えんりゃく)年間(782~806)兵火により焼失、その後807年(大同2)に慈覚(じかく)大師(円仁(えんにん))が中興して現在の寺号となった。もとは修験(しゅげん)(山伏)の寺であり、胆沢(いさわ)城鎮守の式内社である石手堰(いわてい)神社の別当寺として、盛時には48の伽藍(がらん)があったと伝え、一帯に多くの寺跡がある。本尊の木造薬師如来(にょらい)像は胎内に貞観(じょうがん)4年(862)の銘があり、木造僧形坐像(ざぞう)とともに国の重要文化財に指定されている。そのほか四天王立像、十二神将立像、日光菩薩像、月光菩薩像(以上は県指定文化財)などを蔵する。蘇民袋(そみんぶくろ)を争奪する蘇民祭(旧暦1月7~8日)は勇壮な祭りとして名高い。
[中山清田]
『司東真雄著『古代文化の黒石寺』(1982・亀梨文化店)』
岩手県奥州市水沢区黒石町にある天台宗の寺。〈くろいしでら〉ともいう。山号は妙見山。729年(天平1)行基の開基と伝えられ,慈覚大師を中興の祖とする。本尊薬師如来は862年(貞観4)の胎内銘をもつ重要文化財で,造られた時代と風土を反映した厳しい姿をもって知られる。旧暦1月7日夜から翌暁にかけて行われる蘇民祭は,厳寒中の裸の夜祭で,修験の性格をもった寺のなごりを残す。薬師信仰に基づいて厄災消除と五穀豊穣を祈願するものである。
執筆者:藤波 洋香
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…岩手県水沢市にある天台宗の寺。〈くろいしでら〉ともいう。山号は妙見山。729年(天平1)行基の開基と伝えられ,慈覚大師を中興の祖とする。本尊薬師如来は862年(貞観4)の胎内銘をもつ重要文化財で,造られた時代と風土を反映した厳しい姿をもって知られる。旧暦1月7日夜から翌暁にかけて行われる蘇民祭は,厳寒中の裸の夜祭で,修験の性格をもった寺のなごりを残す。薬師信仰に基づいて厄災消除と五穀豊穣を祈願するものである。…
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