六訂版 家庭医学大全科 「鼓膜損傷」の解説
鼓膜損傷
こまくそんしょう
Perforated eardrum
(外傷)
どんな外傷か
鼓膜がいろいろな外傷により
原因は何か
頭部外傷、爆風、平手打ち、耳かきやマッチ棒による耳掃除などによって起こります。耳掃除の最中、手に何か(子どもなど)がぶつかったりして起こることが多いのです。
症状の現れ方
耳痛、耳鳴り、難聴などが起こります。感染が起これば数日後に
これに加えて鼓膜の内側についている耳小骨の連結にも異常があれば、難聴の程度も強く、めまいを伴うこともあります。めまいは内耳とつながっているアブミ骨の
頭部外傷による頭蓋底骨折では
検査と診断
鼓膜穿孔の診断は
治療の方法
感染を起こして耳漏があれば、アミノ配糖体を含まない抗生剤の点耳薬、内服薬を数日服用します。耳漏がなければ鼓膜の穿孔を和紙(たばこの紙)などでふさぎます。1~2週ごとに紙のずれや穿孔の大きさを検査します。
外傷から時間がたっている場合、顕微鏡を使って鼓膜の穿孔縁を処置したのち、3Mテープ、キチン膜、コラーゲンシートなどで閉じます。
穿孔が大きいと閉じにくいので、これらの処置でもふさがらない場合は、自分の組織(耳後部の筋膜や結合組織)をフィブリン糊で接着する方法があります。
外来あるいは短期入院で手術ができます。
神﨑 仁
鼓膜損傷
こまくそんしょう
Perforated eardrum
(耳の病気)
どんな損傷か
鼓膜は、皮膚、
原因は何か
耳かきや綿棒による耳そうじ関連のものが半数弱です。とくに、耳そうじ中に子どもやペットがぶつかり、耳を突くことが多いので気をつけてください。
次いで、びんたなど殴打によるものが約30%、ボールをぶつけるなどスポーツ関連の事故が約20%です。男性にやや多く(60%強)、10~20代が大半です。
症状の現れ方
症状は損傷の大きさにもよりますが、
検査と診断
内耳に障害がある場合には聴力検査を行い、難聴の程度や性質を精密検査する必要があります。高度難聴が生じている場合は、CT検査で、骨折、変位、出血の有無などを調べる必要があります。
治療の方法
受傷直後で耳だれなどがなければ、出血などをきれいに清掃するのみで、とくに処置せず、感染予防の抗生剤も必要ありません。
穿孔周囲の鼓膜が折れて重なっているようなら、自然には治りにくいので、顕微鏡で見ながら元の位置にもどしておきます。めまいなどの症状から内耳障害が疑われる時は、副腎皮質ステロイド薬を併用する必要があります。もし感染が生じて耳だれが出ている場合は、耳鼻科で局所清掃、点耳、抗菌薬投与などの処置を受けてください。
3~4週たっても小さくならない場合は、
3カ月待っても閉鎖しない時は、鼓膜形成術を行います。耳小骨に異常がなければ、手術は外来で行うことも可能です。
菅澤 正
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報