鼻茸(読み)ハナタケ(英語表記)Nasal polyp

デジタル大辞泉 「鼻茸」の意味・読み・例文・類語

はな‐たけ【鼻×茸】

鼻炎などの際に、鼻腔にできるキノコ状の腫瘤しゅりゅう。数や大きさはさまざま。鼻ポリープ

び‐じ【鼻×茸】

はなたけ」に同じ。

び‐じょう【鼻×茸】

はなたけ

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精選版 日本国語大辞典 「鼻茸」の意味・読み・例文・類語

はな‐たけ【鼻茸】

  1. 〘 名詞 〙 鼻の粘膜の一部がはれ上がって茸のようになったもの。鼻腔や副鼻腔慢性炎症があるとき、その刺激によって生ずる。〔名語記(1275)〕
    1. [初出の実例]「当代比七太夫、鼻の内に、はなたけ出来、はなに入音ならず」(出典:わらんべ草(1660)二)

び‐じょう【鼻茸】

  1. 〘 名詞 〙 慢性鼻炎副鼻腔炎などによる分泌物に刺激されて、鼻腔や副鼻腔粘膜が肥厚、隆起して生ずる、一種の腫瘍(しゅよう)。びじ。はなたけ。

び‐じ【鼻茸】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「じ」は「茸」の慣用音 ) はなたけ。

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六訂版 家庭医学大全科 「鼻茸」の解説

鼻茸
はなたけ
Nasal polyp
(鼻の病気)

どんな病気か

 副鼻腔粘膜(ふくびくうねんまく)または鼻腔粘膜から生じる炎症性増殖性の腫瘤(しゅりゅう)で、形は、(くき)を有する洋梨状、釣り鐘状で、みずみずしく浮腫状のものから、発赤があるもの、線維性のものなど、多種多様です。また、単房性のもの、多房性のもの、鼻腔内を充満するもの、さらには後鼻孔(こうびこう)方向に発育する後鼻孔鼻茸もあります(図5)。鼻ポリープとも呼ばれています。

原因は何か

 鼻茸の発症の原因は単一なものではなく、種々の因子が関与しているものと考えられています。しかし、鼻茸は副鼻腔炎アレルギー性鼻炎気管支喘息(きかんしぜんそく)の症例での合併が多いため、感染とアレルギーが原因として最も有力です。

 各病気における鼻茸の合併率を表2に示します。

症状の現れ方

 鼻茸をもつ患者さんで、最も頻度の高い症状が鼻づまりです。鼻づまりが両側にわたって高度な場合は両側性鼻茸、あるいは後鼻孔ポリープも疑うべきです。次いで頻度の高い症状は嗅覚障害鼻汁(びじゅう)鼻漏(こうびろう)、頭痛です。また、喘息アレルギー性鼻炎が合併する場合には、それぞれの症状が伴います。

検査と診断

 まず、問診でアレルギー性鼻炎の有無、気管支喘息の合併の有無、アスピリン過敏性の有無をチェックします。診断は、鼻腔ファイバー(内視鏡)による検査が基本です。通常は、中鼻道から鼻茸が発生しているのが観察されます。また、内視鏡を用いて後方や上方にも鼻茸がないかどうかを観察します。非常にみずみずしい、高度に浮腫状の鼻茸は、アレルギーの関与がある症例に多い傾向があります。

 また、鼻汁の性状が膿性であるか、粘性であるか、水様性であるかを観察します。さらに、鼻副鼻腔X線やCTなどの画像診断、鼻汁細菌検査、アレルギー検査も行います。これらの検査で、その鼻茸が感染性のものか、あるいはアレルギー性の要素が強いかが推定されます。

治療の方法

 鼻茸の治療の目的は、鼻づまりや嗅覚障害といった鼻茸そのものによる症状を改善することです。次いで後鼻漏や鼻漏、頭重感、睡眠呼吸障害などの付随症状も改善します。さらに、下気道の病気を合併している場合は、鼻呼吸を可能にすること、あるいは後鼻漏が軽減することによって呼吸機能の改善が得られます。

 全身的薬物療法としては、気管支喘息などの合併がなく、膿性あるいは粘膿性の鼻汁を伴う鼻茸の場合は感染型副鼻腔炎に伴う鼻茸の可能性が高いため、14員環系(いんかんけい)マクロライドエリスロマイシンなど)の少量長期投与(マクロライド療法)を行います。また、アレルギー要素の強いと思われる鼻茸、あるいは喘息の合併する鼻茸に関しては、抗アレルギー薬の内服、ステロイド薬の点鼻が行われます。

 保存療法で効果が得られない場合は、手術療法が選択されます。単なる鼻茸切除だけでは高率に再発を起こすため、内視鏡下で鼻内副鼻腔手術を行って病巣を除去します。

病気に気づいたらどうする

 鼻茸による種々の症状が、日常生活に与える影響は大きいものがあります。鼻づまりがひどく、以前から蓄膿症(ちくのうしょう)慢性副鼻腔炎)やアレルギー性鼻炎といわれたことがある場合は鼻茸ができている可能性があり、耳鼻咽喉科の受診をすすめます。

飯野 ゆき子, 太田 康


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家庭医学館 「鼻茸」の解説

はなたけはなぽりーぷ【鼻茸(鼻ポリープ) Nasal Polyps】

[どんな病気か]
 表面が平滑(へいかつ)で、ゼラチン様、グレープ様の半透明(はんとうめい)のやわらかいクラゲのような腫瘤(しゅりゅう)が鼻腔(びくう)内に発生する病気です。
 ふつう両側に発生し、頻度は成人の約1%、20歳以後から60歳ごろまで、ほぼ等しい発生率でおこります。
 小児ぜんそくとの関連は認められませんが、鼻茸の約3分の1は成人型ぜんそく(「ぜんそく(気管支ぜんそく)」)と関連して発生するといわれています。
 鼻茸の人の約90%に慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)がみられます。この副鼻腔炎は、ぜんそくの慢性化の引き金になります。
[原因]
 慢性鼻炎(まんせいびえん)や慢性副鼻腔炎の分泌物(ぶんぴつぶつ)の刺激によって、粘膜(ねんまく)がむくんで腫(は)れて生じるという炎症性産物説(えんしょうせいさんぶつせつ)と、鼻茸の組織中に、アレルギーでみられるIgE抗体(こうたい)や好酸球(こうさんきゅう)が存在することから、局所のアレルギー反応で生じるというアレルギー説がありますが、確かな原因はまだ不明です。
[症状]
 鼻茸が小さいうちは、鼻汁(びじゅう)が出る程度ですが、大きくなって鼻腔を塞(ふさ)ぐようになると、頭痛、鼻内圧迫感(びないあっぱくかん)、嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)、記憶力減退、耳管狭窄(じかんきょうさく)などの不快な症状がおこってきます。
[検査と診断]
 鼻鏡(びきょう)で鼻腔を見れば容易に診断できますが、しばしば周囲粘膜と区別できなかったり、慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎を合併していたり、鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)があって、その奥の鼻茸を見逃したりすることがあるので、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)専用の軟性ファイバースコープ、顔面X線検査、CTなどを行なって調べます。
[治療]
 鼻茸の約半数は、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬を噴霧する治療で小さくなります。
 副腎皮質ホルモン薬の局所治療を1か月続けても小さくなるようすがみられなければ、手術が必要となります。
 局所麻酔(きょくしょますい)をして、鼻茸の茎部(けいぶ)を含めて摘出しますが、副鼻腔炎が合併している場合には、顕微鏡や内視鏡を用いた副鼻腔手術を同時に行ないます。
●注意
 鼻茸は、ふつう、両側の鼻腔に複数、発生します。もし、片側の場合は、まれに悪性腫瘍(あくせいしゅよう)のことがあるので、耳鼻科専門医の診察が必要です。
 鼻茸は、ときにアスピリンぜんそくにともなって発症することがあります。かぜ薬を服用した後にぜんそく発作(ほっさ)をおこしたことのある人は要注意です。
 鼻(はな)アレルギーの存在と手術後の鼻茸の再発とは関係ありませんが、アスピリンぜんそくや成人型ぜんそくにともなう鼻茸は手術後、再発しやすいといわれています。
[予防]
 鼻茸自体に対する特別な予防法はありませんが、耳や下気道(かきどう)への影響を避けるために、鼻腔の通気性(つうきせい)を確保し、呼吸を整える治療が必要です。ぜんそくを合併する鼻茸は、放置するとぜんそくを悪化させるといわれ、手術をするとぜんそくは改善します。しかし手術後、しばしば鼻茸が再発することがあります。長期にわたる術後治療と経過観察が、再発予防に効果があります。

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改訂新版 世界大百科事典 「鼻茸」の意味・わかりやすい解説

鼻茸 (はなたけ)
nasal polyps

鼻粘膜とくに上顎洞および篩骨洞の慢性炎症によって自然孔付近より発生する粘膜浮腫。鼻鏡検査では,表面がつるつるした軟らかい蒼白ないしは灰白色の光沢あるキノコ状腫瘤として認められる。慢性副鼻腔炎(蓄膿症)のほかアスピリン過敏症,鼻アレルギーの人にもできやすいといわれる。発生原因は,感染,アレルギーなどいくつかあるらしいが,よくわかっていない。組織学的には,扁平上皮が変形したと思われる上皮でおおわれ,血管や細胞は少ないのが普通であるが,ときには軽く触れただけで容易に出血を起こすものもある。腺構造が発達しているため水分が多く,鼻茸は水の入った袋bag of waterにたとえられる。組織化学的成分は正常の鼻粘膜と比べて大差ない。大きくなると鼻閉と嗅覚障害を招き頭重感がでる。治療は手術による摘出であるが,再発の傾向が大きい。先天性脳憩室や悪性腫瘍との鑑別が重要である。
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百科事典マイペディア 「鼻茸」の意味・わかりやすい解説

鼻茸【はなたけ】

鼻ポリープともいう。慢性の鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)に際して鼻粘膜に生じる炎症性突起物。軟繊維腫で内部に血管や粘液腺も認められる。アレルギーと関連が深い。好発部位は中鼻介と中鼻道。小さいものが多発することもあり,1個で鼻腔全体を占めることもある。鼻閉塞(へいそく),分泌過多,嗅覚(きゅうかく)障害などを招く。治療にはコルチゾンも用いられるが,根治は切除術による。
→関連項目鼻血ポリープ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼻茸」の意味・わかりやすい解説

鼻茸
はなたけ

「びじょう」とも読み、ポリープの一種で、鼻ポリープともいう。鼻腔(びくう)の粘膜が炎症によって浮腫(ふしゅ)性に腫(は)れ、有茎の腫瘍(しゅよう)状になったものである。1個だけの場合と小さな鼻茸が多数ある場合とがある。症状は鼻閉(鼻づまり)が主で、このための嗅覚(きゅうかく)減退や頭痛がある。鼻茸にはかならず鼻炎が伴っているので、その症状としての鼻漏過多やくしゃみを伴う。原因は不明であるが、アレルギーに関係しているという説が有力である。中鼻道に好発する。ときに表面が鮮紅色で出血しやすいものがあり、出血性鼻茸といい、鼻中隔に多い。孤立性で上顎洞(じょうがくどう)開口部より出て後鼻孔の方向へ拡張する非常に大きいものがあり、後鼻孔ポリープとよばれ、小児に多くみられる。治療は切除によることが多いが、除去後の治療をよく行わないと再発することが多い。

[河村正三]

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世界大百科事典(旧版)内の鼻茸の言及

【活劇映画】より

…かつて1910年代にアメリカの連続活劇《名金》などがブームを呼んだとき,市川左団次は〈活動劇は活劇を生命とする〉と語った(《活動之世界》1916年4月号)。また50年代には花田清輝が,〈悲劇や喜劇を完全にアウフヘーベンしたあげく,はじめてうまれてくるもの〉として活劇をとらえ,〈映画の創造した劇的感覚は,なんといっても活劇感覚以外にはない〉と論じた(《さちゅりこん》)。これらの発言は,明らかに活劇を映画の基本的なあり方としている。…

【ダンテ】より

… ダンテの作品は,約言すれば,政治と文学との激しい葛藤のなかで生み出された。日本においては,明治時代から《新生》と《神曲》を中心に,かなりの翻訳と紹介が行われてきたが,その傾向を大別すると,第1は上田敏を頂点とする純文学的動機によるもの,第2は内村鑑三,正宗白鳥ら宗教的関心に基づくもの,第3は阿部次郎が築こうとした哲学的・倫理的傾向のもの,そして第4にダンテの文学を政治と文学の葛藤の角度から(とくに第2次世界大戦下の日本の状況と照らし合わせて)とらえようとしたもの(矢内原忠雄,花田清輝,杉浦明平ら)となる。《神曲》の翻訳としては,文章表現と文体に問題は残るが,最も原文に忠実で正確なものとして,山川丙三郎訳を挙げねばならない(1984年現在)。…

【復興期の精神】より

花田清輝の連作評論集。1946年我観社刊。…

※「鼻茸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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