[ 一 ]は、助動詞「けり」の変化したものといわれる。「物類称呼‐五」に「助語 ことのはのをはりにつくことなり 京師にて『ナ』〈略〉武蔵にて『ケ』上総にて『サ』」とあり、武蔵国の特徴的な文末表現として意識されていたことが分かる。現在は東日本の諸方言に分布している。
動詞「く(来)」の活用形とする説がある。また、推量の助動詞「けむ」は、この「け」と推量の助動詞「む」との接合したものと考えられる。
五十音図第2行第4段の仮名。平仮名の「け」は「計」の草体から、片仮名の「ケ」は「介」の初めの3画からできたものである。万葉仮名には2類あって、甲類に「家」「計」「奚」「鷄」「祁」(以上音仮名)、「異」「來」(以上訓仮名)、乙類に「氣」「既」「居」「戒」(以上音仮名)、「毛」「消」「飼」(以上訓仮名)などが使われ、濁音仮名としては、甲類に「下」「牙」「雅」「夏」「霓」(以上音仮名のみ)、乙類に「氣」「宜」「礙」(以上音仮名)、「削」(訓仮名)などが使われた。(「氣」は清濁両用)。ほかに草仮名としては「(遣)」「(希)」「(氣)」「(稀)」などがある。
音韻的には/ke/(濁音/ge/)で、奥舌面と軟口蓋(こうがい)との間で調音される無声破裂音[k](有声破裂音[g])を子音にもつ。上代では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものとも考えられる。
[上野和昭]
民俗文化の日常的な面を説明する概念として、柳田国男(やなぎたくにお)によって唱えられ、以後、日本文化の構造を解釈する際の有効な手段として人文科学の諸分野で使われるようになっている。ケは漢字の表記では、褻、毛、気の3通りがある。褻は、衣・食・住にわたる生活文化に具体的に表れており、ごく普通の日常生活を示している。毛は、植物の生育にかかわる語であり、とくに稲作の生育を支える稲魂(いなだま)の力と関連づけられている。気は、人間の生命力と関連する語である。ケは以上のような多面的な文化の総体と考えられている。そしてケの維持ができなくなると、ハレという形の儀礼が形成されることになり、ケとハレはともに民俗文化を構成する主要素と考えられている。
[宮田 登]
褻・毛・気などの漢字をあてる。ハレと対比される語で,民俗学上,日常生活文化を分析する概念として定立している。祭や年中行事・冠婚葬祭など,特別な時間すなわちハレをのぞいたごくふつうの毎日の暮しをいう。「ふだん」ともいい,普段着を着て,普段の食事をして,仕事に励む。褻の字は,晴着を脱いでいる状態を表し,毛は稲の成育状態をさす。また気は人間の生命力と関係する語である。したがってケには,人間のごくふつうの日常生活を支えているエネルギーの存在を予測させる。ケが順調にいかない状態に対して,ケガレ(気枯れ)の意味を与え,ケがケガレになるという説明原理も成立している。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…罪と災いとともに日本古代の不浄観念を構成し,これを忌避する,忌(いみ)または服忌(ものいみ)の対象をいう。記紀には穢,汚,汚垢,汚穢,穢悪などと表記され,またケガラワシともキタナシとも読まれる。穢と罪とはきわめて密接な関係があって,多く罪穢(つみけがれ)と熟して用いられるが,罪が広く社会の生業を妨害し規範を犯して集団の秩序を破壊する意図的な危険行為を指すのに対し,穢は人畜の死や出血や出産など異常な生理的事態を神秘的な危険として客体化したものである。…
…日常的な普通の生活や状況を指すケ(褻(け))に対して,あらたまった特別な状態,公的なあるいはめでたい状況を指す言葉。日本の伝統的生活の中には,ハレ着,ハレの日,ハレの門出,ハレの場など,このような特別な状態を表現する様式が発達している。…
※「け」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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