20世紀フォックス(読み)にじっせいきフォックス(その他表記)Twentieth Century-Fox Film Corporation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「20世紀フォックス」の意味・わかりやすい解説

20世紀フォックス
にじっせいきフォックス
Twentieth Century-Fox Film Corporation

アメリカ合衆国の大手映画会社。1935年に 20世紀映画とフォックスフィルムが合併して設立。フォックス・フィルムは 1915年ニューヨークで設立された。1927年ドイツのサウンド・オン・フィルム・システムの特許を取得し,同年,初の音声入りニュース映画『フォックス・ムービートーン・ニュース』Fox-Movietone Newsを公開。だが大恐慌直前の時期にこうした事業で大きな借金を抱え,1930年に経営危機に陥った。一方の 20世紀映画は 1933年,ジョゼフ・シェンクと,ワーナー・ブラザースの制作責任者を辞したダリル・F.ザナックによって設立された。ザナックは 1935~71年(1956~61年を除く)制作責任者を務めた。1930年代後半から 1940年代は,おもに西部劇ミュージカル伝記宗教劇などを制作。当時の作品には『怒りの葡萄』The Grapes of Wrath(1940)をはじめとするジョン・フォード監督の代表作や,シャーリー・テンプル主演のミュージカル映画がある。その後,『紳士協定』Gentlemen's Agreement(1947)などの社会派作品を次々に制作。1953年にはシネマスコープを導入し,第1作の『聖衣』The Robe(1953)は,その後主流となるワイドスクリーン映画のさきがけとなった。1950年代にはマリリン・モンローをスターの座に押し上げた。巨額の制作費を投じた超大作史劇『クレオパトラ』Cleopatra(1963)が興行的に失敗し会社が経営危機に直面すると,大作『史上最大の作戦』The Longest Day(1962)で成功を収めたザナックが最高経営責任者に復帰。続く『サウンド・オブ・ミュージック』The Sound of Music(1965)は大ヒットとなった。その後のヒット作品には,『M★A★S★H(マッシュ)』M*A*S*H(1970),『タワーリング・インフェルノ』The Towering Inferno(1975),『スター・ウォーズ』Star Wars(1977)などがある。1981年,石油王マービン・デービス一族に,次いで1985年に世界的メディア王ルパート・マードックに買収された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「20世紀フォックス」の意味・わかりやすい解説

20世紀フォックス
にじっせいきふぉっくす
Twentieth Century-Fox

アメリカの映画会社。1935年に、20世紀映画とフォックス映画が合併して成立。20世紀映画に在籍していたダリル・F・ザナックが製作担当の副社長に就任し、1950年代後半まで個々の作品製作を指揮した。設立当初は、圧倒的な人気を誇っていたシャーリー・テンプルShirley Temple(1928―2014)の主演作品により支えられていた。1940年代は、アリス・フェイAlice Faye(1915―1998)やカルメン・ミランダCarmen Miranda(1909―1955)を配したミュージカルおよびベティ・グレイブルBetty Grable(1916―1973)の主演作品が人気を博し、またジョン・フォード、エリア・カザン、ジョゼフ・L・マンキーウィッツJoseph Leo Mankiewicz(1909―1993)などの監督作品が同社の評価を高めた。第二次世界大戦後のテレビとの競合においては、大型映画の開発で先陣を切り、シネマスコープの導入を成功させた。また1950年代の同社はマリリン・モンローの活動の拠点でもあった。20世紀フォックスはコングロマリットに買収されることなく、独立を維持して1960年代から1970年代を通過したが、1985年に、オーストラリアのルパート・マードックニューズ・コーポレーションの傘下となった。これ以降、20世紀フォックスはニューズ・コーポレーションにとって貴重な番組ソフトの供給元と位置づけられている。現代のヒットメーカーのジェームズ・キャメロンとの良好な関係は、同社の大きな資産といえよう。

[濱口幸一]

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百科事典マイペディア 「20世紀フォックス」の意味・わかりやすい解説

20世紀フォックス[会社]【にじっせいきフォックス】

米国の映画制作・配給会社。ハリウッドの〈ビッグ・ファイブ〉の一つ。1915年設立のフォックス社とザナックDarryl Francis Zanuck〔1902-1979〕が1933年設立した20世紀映画社が1935年合併。1953年にシネマスコープを他社にさきがけて採用した。《王様と私》など大作で成功したが,失敗も多く,超大作といわれた《クレオパトラ》での大失敗で経営が傾く。その後《サウンド・オブ・ミュージック》や《猿の惑星》などヒット作もあったが,1970年には7700万ドルの赤字に陥った。その後は《スター・ウォーズ》などで一時巻き返したかにみえた。しかし,プライベート・カンパニーの限界がつき1981年にはユナイテッド・テレビジョン社に合併され,現在はニューズ・コーポレーションの傘下に入っている。

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