所得への課税額を計算する際に、個々人の税金を払う能力(担税力)に応じ、課税額から一定額を差し引いて納税額を軽くする制度。所得の低い人の納税額が多くならないように調整するほか、家族構成や病気の有無などを納税額に反映させるねらいがある。所得控除は2014年(平成26)時点で14種類あり、個人の事情を反映する「人的控除」と、地震保険への加入を促進するものや非営利組織(NPO)への寄付を促すものなど政策的色彩の濃い「その他の控除」の大きく二つに分けられる。
「人的控除」の代表例としては、所得のある人すべての所得税課税額から一律38万円を差し引く「基礎控除」や、配偶者の年収が103万円以下の場合に本人の所得税課税額から38万円を差し引く「配偶者控除」などがある。なお、配偶者の年収が103万円を超えても141万円未満であれば、本人の所得税課税額から3万円以上38万円以下を差し引く「配偶者特別控除」が利用できる。そのほか、「扶養控除」「障害者控除」「寡婦(寡夫)控除」「勤労学生控除」もある。
「その他の控除」には、年間医療費(最高200万円)から10万円を差し引いた額を所得税課税額から控除できる「医療費控除」のほか、災害や盗難などで損害を受けた場合の「雑損控除」、「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「寄附金控除」がある。また地方自治体に納める個人住民税についても、控除額は異なることもあるが、所得控除と同じ種類の控除が適用される。
なお、配偶者控除に対しては、既婚女性が年収上限を気にして職につかないといった弊害があるとの批判があり、安倍晋三(あべしんぞう)政権は2014年3月、女性の社会進出を促す目的で、縮小・廃止を検討するよう政府税制調査会へ指示した。
所得控除とは別の仕組みとして、所得税課税額からではなく、本来払うべき税額から一定額を差し引く「税額控除」という制度もある。その代表例は「住宅ローン控除」「配当控除」「政党等寄附金特別控除」である。
[矢野 武]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2007年)
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…これにより法人所得に初めて課税されるようになった。大正時代にも所得税制の近代化が進み,(1)超過累進税率の採用と税率の高度化,(2)勤労所得控除の創設,(3)扶養控除の創設,などがみられた。1940年の大改正では,法人税が所得税から別建てとされ,分類所得税と総合所得税の2本立てに改められたが,第2次大戦後の47年には再び総合所得税1本に戻るとともに,申告納税方式が採用された。…
※「所得控除」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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