家庭医学館 「混合性結合組織病」の解説
こんごうせいけつごうそしきびょう【混合性結合組織病 Mixed Connective Tissue Disease(MCTD)】
膠原病(こうげんびょう)という名前でくくられる一群の病気は、合併することが知られています。1人の患者さんが2つの膠原病をもっていたり、ある膠原病から、ほかの膠原病に移行したりするのです。
1972年、アメリカの医師シャープらは、混合性結合組織病という独立した病気があることを提唱しました。全身性エリテマトーデス、強皮症(きょうひしょう)、多発性筋炎(たはつせいきんえん)の要素を混合してもつ人がおり、そのような人は自分の細胞の核に対する抗体(こうたい)(抗核抗体(こうかくこうたい))の一種、抗RNP抗体を共通してもっているというのがその理由です。
しかし、3つの膠原病の混合する割合が患者さんによってちがうこと、抗RNP抗体は、この病気以外に、全身性エリテマトーデスなどでもみられることから、これを独立した病気として診断することには異論もあります。
日本では、厚労省の特定疾患(とくていしっかん)(難病(なんびょう))のひとつに指定され、診断基準もつくられているので、膠原病のひとつとして確立されています。また、医療費の自己負担分の多くは公費で補助されます。
混合する3つの病気の、それぞれの程度は軽いのですが、肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)(「原発性肺高血圧症」)をともなう場合には、治療が困難で、死につながります。
20~50歳の女性におこりやすい病気です。
[症状]
手指の皮膚が蒼白(そうはく)から青紫、さらに赤くなるレイノー現象は、ほとんどの患者さんでみられ、初発症状でもあります。手指や手の甲(こう)の腫(は)れ、むくみはこの病気に特徴的です。
全身性エリテマトーデスの症状としては、関節の痛み、顔の紅斑(こうはん)、胸膜炎(きょうまくえん)や心膜炎(しんまくえん)、腎炎(じんえん)がみられます。
強皮症の症状としては、皮膚硬化(手や顔にかぎられることが多い)、肺線維症(はいせんいしょう)、食道の病変(飲み込みにくい、胸やけ)が生じます。
多発性筋炎の症状としては、比較的軽い筋力低下が肩や上腕(じょうわん)、大腿(だいたい)(太もも)にみられます。そのほかに、肺高血圧症が5~10%の患者さんにおこります。肺高血圧症を合併すると心不全で死亡する率が高まります。
[検査と診断]
この病気を診断するには、抗RNP抗体が陽性であることが条件となっています。陰性であれば、この病気は否定できます。
血液検査では、白血球(はっけっきゅう)の数が減少したり、血小板(けっしょうばん)が減少しているのがわかります。
筋肉の病変をみるために、血液中の筋肉由来の酵素(こうそ)の測定や筋電図検査が行なわれます。
尿には、たんぱくが出ます。胸のX線検査で、胸膜炎、心膜炎、肺線維症、肺高血圧の有無を判断します。
肺機能検査、心電図、心エコー図の検査も行なわれます。
前に述べた3つの膠原病のうち、少なくとも2つの病気の病変がみられることが、診断の条件になります。
[治療]
治療は、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬を使用します。使用量は病変の種類と程度によって決まりますが、全身性エリテマトーデスと比べ、少ない量でも効果があります。
しかし、強皮症の病変や肺高血圧症に対しては、よい治療法がありません。
[日常生活の注意]
病状にあった生活をおくることが必要です。慢性の病気ですから、海水浴やスキーをしない、防寒を心がける、過労を避ける、たんぱく質・カルシウムに富んだ食事をする(肥満を避ける)、禁煙する、などを心がけましょう。