多発性筋炎(読み)たはつせいきんえん(英語表記)polymyositis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

多発性筋炎
たはつせいきんえん
polymyositis

骨格筋,ときに皮膚が急性,亜急性,または慢性の経過をとって侵される非特異的炎症疾患をいう。筋肉の炎症を主徴とするリウマチ性疾患の一種。原因は不明であるが,自己免疫またはウイルス感染が考えられている。症状としては,筋肉の萎縮と筋力低下,皮膚紅斑レイノー現象,発熱,関節炎などが生じる。急性および亜急性のものに対しては副腎皮質ステロイドで治療する。

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百科事典マイペディアの解説

多発性筋炎【たはつせいきんえん】

主として四肢の躯幹(くかん)に近い筋肉の筋力低下や萎縮(いしゅく)を生ずる疾患。高熱・頭痛・嘔吐(おうと)とともに上肢筋などに牽引(けんいん)痛・圧痛を生じ,皮膚は腫脹(しゅちよう)・硬化し,麻疹疱疹(ほうしん),紅斑などを呈し,皮膚筋炎とも呼ばれ,膠原(こうげん)病の一種とされる。呼吸筋,嚥下(えんげ)筋が冒されると致命的なことがある。治療には解熱薬鎮痛薬副腎皮質ホルモン剤ACTH副腎皮質刺激ホルモン),免疫抑制剤などを投与。筋萎縮症には温浴,マッサージなどを行う。

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世界大百科事典 第2版の解説

たはつせいきんえん【多発性筋炎 polymyositis】

骨格筋の炎症性変化を主体とする筋疾患。他の疾患に伴わず症状が骨格筋に限られているものを狭義の多発性筋炎といい,著しい皮膚症状を伴うものは皮膚筋炎という。また全身性エリテマトーデス慢性関節リウマチ,結合組織の病変によって,皮膚の硬化をきたす強皮症などの膠原病(こうげんびよう)やサルコイドーシスシェーグレン症候群などに伴うものもある。原因は不明であるが,自己免疫的機序やウイルス感染などの可能性が考えられている。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

多発性筋炎
たはつせいきんえん
Polymyositis
(子どもの病気)

どんな病気か

 筋肉を障害する原因不明の炎症性疾患です。7歳前後の小児から老人まですべての年齢にみられ、いろいろなタイプがあります。筋炎とともに皮膚の症状がみられる場合は皮膚筋炎(ひふきんえん)といわれます。

原因は何か

 原因不明ですが、自分の身体に対する抗体が現れてきて、不都合な症状を引き起こしてくる自己免疫性疾患に伴って起こることがあります。

症状の現れ方

 発熱や全身の倦怠感(けんたいかん)とともに大腿、上腕の筋肉や(くび)の筋力低下がみられます。数週~数カ月の経過で筋力低下は進んでいきます。お風呂に出入りするのがつらくなったり、頭を枕から持ち上げにくくなったりします。筋肉に痛みを感じることも多いようです。皮膚の症状としては、眼の周囲の皮膚や手指の関節の背面が紫赤色にはれぼったくなったりします。

 合併症として、全身の血管に炎症が起こったり、呼吸不全に陥りやすい間質性(かんしつせい)肺炎がみられたりします。高齢者の場合は悪性腫瘍の発生にも注意が必要です。

検査と診断

 血液検査で筋肉由来の酵素(CK、LDH、AST、アルドラーゼ)の値の上昇がみられます。障害を受けた筋肉に針を刺して検査する筋電図と、筋肉の一部を切開して筋肉を取り、顕微鏡で調べる筋生検が、診断のために必要な検査です。

治療の方法

 副腎皮質ステロイド薬の内服が有効です。効果がみられない場合や重い場合、合併症がある場合は、パルス療法といわれるステロイド薬の集中大量点滴投与を行います。

病気に気づいたらどうする

 筋肉だけにとどまらない病気なので、全身的なチェックを十分に受けてください。病気や薬に対する理解が必要なので、医師との十分な連携をとるようにします。

平松 公三郎

多発性筋炎
たはつせいきんえん
Polymyositis
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 膠原病(こうげんびょう)の一種としての多発性筋炎がまず有名です。患者さんの数も多く、診断に苦慮することも多い病気です。何らかの原因で自分の筋肉に自己抗体をつくり、自分の筋細胞を破壊すると考えられます。

症状の現れ方

 発熱、関節炎(関節が赤くはれ、痛い)、筋痛とともに筋力低下が数カ月の間に進行します。皮膚症状が合併すると皮膚筋炎(コラム)と呼ばれますが、本質的には同じ病気と考えます。

検査と診断

 血清CK(クレアチンキナーゼ)値の上昇と、筋生検(組織の一部を採取して調べる検査)での筋細胞の壊死(えし)・再生所見と細胞浸潤(しんじゅん)の出現によって診断できます。血清Jo­1抗体の出現もみられます。

治療の方法

 膠原病の一種ですから、副腎皮質ステロイド薬の投与が効果的です。発病後6カ月以内に治療を開始することが大切とされています。ステロイド薬の効果が思わしくない症例では、免疫グロブリン大量静注療法が有効だという報告もあります。

 筋痛がある間は安静にしているべきですが、筋痛がなくなったら積極的にリハビリテーションを行うことが大切です。

 中年以降の多発性筋炎の半分近くが、悪性腫瘍(しゅよう)(がん)の一症状です。発症した時点ではがんが見つからないことが多く、数年経過してから初めてがんが見つかることも少なくありません。

多発性筋炎
たはつせいきんえん
Polymyositis
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 多発性筋炎は、骨格筋に原因不明の炎症が生じ、主として四肢近位筋(ししきんいきん)頸部(けいぶ)咽頭筋(いんとうきん)の対称性筋力低下と、それによる障害を起こす病気です。同時に皮膚症状を伴うと皮膚筋炎と呼ばれます。どちらも筋症状の特徴には差がないため、一括して多発性筋炎・皮膚筋炎と表して扱われることが多いです。

 多発性筋炎は、筋疾患と全身性自己免疫疾患の2つの側面があります。ほかの自己免疫疾患や悪性腫瘍を合併することが少なくありません。40~60歳の女性に多く発症します。

原因は何か

 病因は不明です。筋肉を中心に自己免疫反応(何らかの原因で自分の筋肉に自己抗体を作り、自分の筋細胞を破壊する反応)が生じて発症するとの考えが有力です。

症状の現れ方

 初発症状として、数週から数カ月にわたって亜急性に進行する下肢近位筋(体の中心に近い筋肉)の筋力低下が多くみられ、歩行や階段昇降に困難を生じます。座位から立ち上がることが困難になってくることも少なくありません。

 上肢近位筋が侵されると高いところの物がとれなくなり、頸部(けいぶ)(首)の筋力低下では頭を枕から挙上できないなどの症状が出ます。咽頭筋の筋力低下により嚥下(えんげ)構音(こうおん)障害もときにみられます。筋痛は約半数に認められる比較的特徴的な症状のひとつで、急性期に多くみられます。筋萎縮は最初ありませんが、慢性化すると出現します。

 さらに皮膚に何らかの症状(眼瞼(がんけん)部の浮腫を伴った紅斑(こうはん)、手指関節背側の紅斑など)が多くみられ、皮膚症状が主であれば皮膚筋炎の可能性が大きくなります。

 呼吸器病変として間質性肺炎(かんしつせいはいえん)や呼吸筋筋力低下による低換気を認めます。心筋炎から不整脈や心不全となり、重要な死因のひとつとなっています。

検査と診断

 血液検査では、骨格筋特異的酵素であるクレアチンキナーゼ、アルドラーゼや血清ミオグロビン値が上昇します。抗核抗体の検査では、本疾患に特異的な抗Jo­1抗体について調べます。筋電図では筋原性変化をみます。筋生検では筋内膜や血管周囲に炎症性細胞浸潤を認めます。

 以上から、筋炎の存在と皮疹を検討して診断をします。鑑別診断としては進行性筋ジストロフィー症が重要です。

治療の方法

 治療の開始が早いほど治療効果が期待できます。薬物療法としては、ステロイド薬、免疫抑制薬、γ(ガンマ)­グロブリン大量静注療法などがあります。

 急性期には安静と保温が必要です。回復期になれば軽いストレッチからリハビリテーションを開始し、慢性期には関節拘縮(こうしゅく)廃用性萎縮(はいようせいいしゅく)の予防と、過度の運動は避けるような日常生活指導をします。

 多くの場合で機能障害の改善がみられ、社会生活をあまり不自由なく送ることができるようになります。しかし、一部は長期間にわたり高度な機能障害が残り、徐々に進行します。

病気に気づいたらどうする

 内科あるいは皮膚科を受診してください。

藤井 正司

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世界大百科事典内の多発性筋炎の言及

【運動麻痺】より

…このような痙性四肢麻痺はまた大脳の広範な病変によっても生ずるが,そのような場合には,単に運動麻痺のみでなく,知能や意識の障害,視覚・聴覚の障害,痙攣(けいれん)発作などを伴うのが普通である。多発性筋炎進行性筋ジストロフィー症のような全身を侵す筋肉疾患,ギラン=バレー症候群のような多発性根神経炎,運動ニューロン疾患などでは,弛緩性の四肢麻痺を呈することが多い。これらの疾患,とくに後2者においては,顔面筋やその他の脳神経系の運動麻痺をきたすことも少なくない。…

【皮膚筋炎】より

…多発性筋炎のうち,著しい皮膚症状の伴うものをいう。顔とくに目の周囲や髪の生え際,手指,ひじ,ひざなどに淡紫色の特有の紅斑が現れるのが特徴で,浮腫や筋力低下などの筋肉症状を伴う。…

※「多発性筋炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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