Istituto per la Ricostruzione Industrialeの通称。産業復興公社と訳される,イタリアの100%政府出資の国家持株会社。世界恐慌でイタリアの三大銀行(イタリア商業銀行,イタリア信用銀行,ローマ銀行)は破産寸前になり,産業は危機にひんした。こうした混乱のなかで最後の切札として,金融再編成,産業復興を目的として,ムッソリーニ政権により1933年1月に設立されたのがIRIである。IRIは公法上の法人であり,日本でいう特殊法人にあたる。
イタリアでは国家持株会社制度がとられ,国家持株省の下にIRIをはじめ,ENI(エニ)(炭化水素公社),EFIM(エフイム)など,合計六つの持株会社があり,それぞれの持株会社の下に(持株子会社が入ることもある),多くの事業会社がある。IRIはこのうちの最大のグループである。IRIグループは,(1)国家持株会社としてのIRI本社,(2)電話,海運,鉄鋼,機械,造船の各部門ごとの持株子会社としての金融会社,(3)その配下にある多数の事業会社という3段階からなる。IRIは,これら金融会社の全部または大部分の株式を保有することにより,各金融会社の子会社である事業会社をいわば間接出資方式により支配している。このほか,航空(アリタリア・イタリア航空)・高速道路・放送会社など直接出資している企業も数十社をかぞえ,また前述の三大銀行等も直轄部門である。IRIはこうしてグループ各社の持株会社の立場にあり,国家政策として示される目的につき,企業主の立場から政府に対し提案し,グループの長として傘下の企業に対し重要な方針や各業種の戦略などを決定する。1950-60年代のイタリアの産業復興に対して果たした役割は大きなものがあったが,70年代に入り,とくに石油危機後は経営悪化問題が生じている。なおIRIグループの規模は売上高でみてヨーロッパ有数である。経営悪化に加え国の財政赤字削減のためもあり,IRIのほかENI,ENEL(電力公社),INA(保険公社)の4社を民営化する法律が92年成立し,株式会社に移行して徐々に株式の売却が進められ,2001年6月IRIは清算された。
執筆者:水上 潤
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…国家の救済により再建が図られたが,事業活動の主力は造船業に縮小。33年以降は国家持株会社の産業復興公社IRIによって経営され,傘下の造船部門の主要企業として現在に至っている。【堺 憲一】。…
…後進性という南部のイメージが定着したのは,そのためである。1922年から始まるムッソリーニ政権下では,電力・自動車・化学などの重化学工業が一層の発展を見せると同時に,国家機関による産業融資制度が発足し,〈産業復興公社(IRI(イリ))〉と呼ばれる国家持株会社が33年に創設された。現在のイタリア経済の基本的特質をなす混合経済体制が成立したわけである。…
… 29年に始まった世界恐慌はイタリアにも影響を及ぼし,銀行危機を招いた。政府は,銀行救済のために,33年産業復興公社(IRI(イリ))を設立し,従来の兼営銀行に代わって,この国家機関に長期の産業融資の任務をゆだねた。IRIは最初暫定的な機関として考えられていたが,37年に恒久機関となり,新たに国家持株会社の性格を与えられた。…
※「IRI」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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