足の表面にあるたくさんの静脈(表在静脈という)が拡張し、
ほとんどは一次性で、立ち仕事の多い女性に多く現れ、足を挙上する(高く上げておく)ことによって改善します。夕方に目立ちますが、一晩寝ると朝には消失していることがほとんどです。
下肢の表在静脈だけでなく、
足の静脈は、表面を走る表在静脈系(
最も多くみられる、静脈弁の機能不全によって起こる一次性の静脈瘤の原因としては、もともとの静脈壁の構築の弱さだけでなく、遺伝的要因や妊娠、肥満、立ち仕事といった要素の関連も指摘されています。
初期には静脈の
慢性期になると、浮腫、出血、皮膚の色素沈着、
下肢の下垂による静脈瘤の悪化と挙上による改善で、一次性静脈瘤が診断されます。すなわち、静脈瘤が立位により著しくなり、足の挙上によって消える場合には一次性静脈瘤と考えられ、症状に応じて手術なども考慮します。
最近では、超音波断層法や静脈造影によってより詳しい静脈瘤の部位と程度の診断が可能です。
初期の軽度のものでは、長時間の立位を避け、弾性ストッキングを着用し、夜間に患肢を挙上する(高く上げておく)ことによって、症状は改善します。
症状が強く大きな静脈瘤があるもの、うっ血が著しくて下肢の挙上でも改善しないもの、慢性の静脈血行不全があるもの、血栓性静脈炎を繰り返すものなどに対しては、①大小伏在静脈の皮下抜去(ストリッピング)、②静脈の高位結紮剥離、③静脈瘤の切除、④硬化薬注入による治療などが行われます。
この病気は、残念ながら完治することはありません。一晩寝て翌日には消える程度のものならば様子をみてもかまいませんが、翌朝もむくみがとれない場合は、全身の病気のチェックも含めて、一度内科医の診察を受けることが必要です。
丸山 義明
下肢の、とくに膝下3分の1の静脈が太く浮き出ているものを
静脈瘤は立ち仕事の人に多く、出産が誘因になることもあるため女性に多く、遺伝的要素もあります。年齢とともに頻度は増え、40歳以上の女性の1割に静脈瘤が認められます。
治療の基本は静脈にたまった血液をとることです。弾性ストッキングや弾性包帯で患部の静脈を圧迫するのが第一です。屈伸運動などで下肢の筋肉を動かすとポンプ作用で血液が流れやすくなります。根治療法として硬化療法、
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
静脈の怒張(異常な部分的拡張)をいい、皮下の静脈がつる状にくねくねと蛇行したり、円筒状や紡錘状、あるいは嚢(のう)状になったものをさす。下肢によくみられ、単に静脈瘤といえばこの下肢静脈瘤をさす場合が多い。ほかに食道静脈瘤や精索静脈瘤などがあり、痔核(じかく)(いぼ痔)もこの一種である。原因としては、先天性の静脈拡張をはじめ、深部静脈の血管閉塞(へいそく)や異常な内圧上昇によって皮下静脈が側副血行として拡張するもの、あるいは下肢静脈瘤のように静脈弁の機能不全によって静脈血の心臓方向への還流が妨げられるものもある。
下肢静脈瘤は理髪師や調理師など長時間立ったまま働く職業の人、あるいは中年以降の女性や妊婦などに好発し、患肢の疼痛(とうつう)や疲れやすさを訴える。この状態が長時間続くと、慢性静脈血行不全となり、うっ血のため血栓性静脈炎をおこしやすく、ときにこの血栓が剥離(はくり)して肺に達し、重篤な肺塞栓をおこすことがある。下肢が長くて肥満した女性が多い欧米では、まれではない。反復する静脈炎のために潰瘍(かいよう)(静脈瘤性下腿(かたい)潰瘍)もみられる。治療としては、軽症の場合、足を高くあげて休んだり、サポートタイツやストッキングを用いるが、静脈瘤が高度で血栓性静脈炎を反復する場合は手術の適応となる。通常、流入静脈の高位結紮(けっさつ)と大・小伏在静脈の皮下抜去(皮下静脈抜去術stripping)が行われ、局所の静脈瘤切除を併用することが多い。
[竹内慶治]
静脈瘤とは静脈が枝分れをし,曲がりくねって内腔が拡張する状態であるが,単に静脈瘤といえば下肢の表在皮静脈の静脈瘤を指す。下肢の静脈瘤は先天性の血管奇形,動静脈瘻(ろう),深部静脈の閉塞,骨盤腔内の腫瘤による深部静脈の圧迫,妊娠などの場合などにもみられるが,最も多いのは皮静脈の弁の機能が悪いために起こるものである。静脈は血液を心臓に送り返す役目をもち,弁によって血液の逆流を防ぎ,正常では血流は心臓方向への一方通行となっているが,生まれつき静脈壁が弱かったり,病気のために変化が起こったりすると,弁の機能が悪くなって完全に閉鎖しなくなり,立っているときに血液が重力によって逆流し,その結果,下肢の皮静脈は拡張し,長くなって曲がったりする。静脈瘤を放置しておくと,下腿の下部に浮腫や皮膚炎が起こり,やがて硬いしこりや潰瘍を生ずるようになる。治療として,弁が悪くなって役に立たなくなった皮静脈を薬で閉塞したり,ひどい場合には抜き取る手術を行う。
執筆者:三島 好雄
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