ギヨー(英語表記)Arnold Guyot

デジタル大辞泉 「ギヨー」の意味・読み・例文・類語

ギヨー(guyot)

大洋底からそびえたつ、頂上の平らな海山。火山島が波食で平坦になり、徐々に沈降してできたもの。米国の地理学者A=H=ギュヨーにちなむ名。平頂海山。ギュヨー。

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改訂新版 世界大百科事典 「ギヨー」の意味・わかりやすい解説

ギヨー
Arnold Guyot
生没年:1807-84

19世紀中葉のアメリカの地理学者,教育家。スイスのヌシャテル湖畔に生まれ,ヌシャテル大学を経て,1825年ベルリン大学に学ぶ。初め神学を志したが,地理学者K.リッターの講義を聞き,A.vonフンボルトと知るに及んで地理学に転向した。高等学校教師時代にはアルプスの氷河研究に熱中し,氷河学者としても一家をなした。46年同郷の親友,生物学者J.L.R.アガシーの招きによりアメリカに渡り(のちアガシーとともに帰化),ボストンで地理学の連続公開講義を行い,48年この講義を《地人論》《The Earth and Man》と名づけて刊行した。リッターを祖述した目的論的地理学とされているが,当時としては生新な自然地理概説書で,かなりの好評を得た。54年プリンストン大学の教授に任命され,在任30年,この間,地形学,気象学,地理教育に著しい業績を残した。なお,大洋底から1000m以上突起している平頂海山もギヨーと呼ぶが,1946年に北西太平洋でこれを発見したH.H.ヘスが,ギヨーにちなんで命名したものである。
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ギヨー
guyot

海山のうち山頂がほぼ平坦で水深が深いもの。平頂海山ともいう。1946年ヘスH.H.Hessにより北西太平洋で発見され,スイス生れのアメリカの地理学者ギヨーにちなんで名づけられた。その後世界各地で発見されている。中部太平洋のギヨーから白亜紀造礁サンゴや二枚貝化石が採集され,ギヨーはかつて海面上にあった火山島が波食され,その平坦面上にサンゴ礁が形成されていたがなんらかの原因で2000m以上も沈下したものだとされた。ビキニ環礁エニウェトク環礁掘削でもサンゴ礁の基底は1500mにも達していて,ギヨーと似た沈下があったことがわかった。

 海底火山が活動終了後に沈下する原因は,海洋プレート自体の沈降もあるが,山体そのものの沈下も考えられている。日本付近では襟裳(えりも)海山,鹿島第一海山などがギヨーであり,山頂から白亜紀の貝化石や有孔虫化石が採取されており有名である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギヨー」の意味・わかりやすい解説

ギヨー
ぎよー
guyot

深海底からそびえたつ海山で、頂上部が平らで広いもの。発見者H・H・ヘスが19世紀のスイス生まれの地質学者ギヨーA. H. Guyot(1807―1884)の名にちなんで名づけた。日本では平頂海山ともよばれる。円形または長円形で火山性である。かつては頂部を海面上に現していた火山島が、波食によって頂上部が平坦(へいたん)にされたのち、沈降によって海山となったものと考えられている。沈降の原因には種々の仮説があるが、プレートテクトニクスによるのが有力である。

[安井 正]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギヨー」の意味・わかりやすい解説

ギヨー
Guyot, Arnold Henry

[生]1807.9.28. スイス,ブドビエ
[没]1884.2.8. アメリカ合衆国,ニュージャージー,プリンストン
スイスの地理学者,地質学者。神学を志したが,ジャン=ルイ・ロドルフォ・アガシーと交わり,科学者の道を選んだ。ドイツでアレクサンダー・フォン・フンボルトやカール・リッターの指導を受けて地理学を修め,1839~48年ヌーシャテル大学で地理と歴史を講じた。1848年アガシーに従ってアメリカ合衆国に渡り,1854~84年プリンストン大学教授。地質学,気象学を研究し,氷河の調査や気象観測に業績を残し,アメリカの気象台の設置に力を尽くした。頂部の平らな海山「ギヨー」はアメリカの地球物理学者ハリー・ハマンド・ヘス(1906~69)がギヨーの名にちなんで命名した。主著『大地と人』The Earth and Man(1849英訳)。

ギヨー
guyot

平頂海山ともいう。大洋底から 1000m以上そびえ立つ海山のうち,その頂部が海面から 200m以上深く,頂上部が平坦なものをいう。 1946年に H.ヘスが北太平洋で発見,地理学者 A.ギヨーにちなんで命名。その後南太平洋,アラスカ湾,インド洋,大西洋からも続々と発見され,全世界の大洋に広く分布していることがわかった。ギヨーの頂部は 200~2500mの深さにわたるが,多くは 1000~2000mの深さに分布する。頂部に玄武岩の円礫や浅海性の化石があることから,かつて海面に近いところで波食を受けたものが,なんらかの原因で沈降したことを示す。現在までに 1800mの深さのギヨーからは白亜紀,1000mのものから始新世の化石が発見されている。太平洋では西側ほど古い時代のギヨーが分布するとみられ,海洋底拡大説の根拠の一つにされる。

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百科事典マイペディア 「ギヨー」の意味・わかりやすい解説

ギヨー

平頂海山とも。海山のうち平らで広い山頂を有するもの。頂部の径は数km以上,頂部の周縁に島棚状段丘を有し,平頂面深度はふつう1〜2km。最初アラスカ湾で記載されたが,米国の地質学者ヘスが中部太平洋で多数発見し,スイス生れで米国に移った19世紀の地理学者ギヨーにちなんで命名。その後中部太平洋のギヨーから白亜紀後期の造礁サンゴ,貝化石が発見された。このことから,かつて海面上にあった火山島が波浪浸食により平頂化し,その面にサンゴ礁が形成されていたが,白亜紀後期以後になんらかの原因で2000m以上も沈下しギヨーができたとされている。
→関連項目海底火山海底地形

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岩石学辞典 「ギヨー」の解説

ギヨー

深海底からそびえ立つ海山で,頂上部が平らで広いものである.1946年にヘス(H. H. Hess)が発見し,スイスの地理学者であるギヨー[A. H. Guyot : 1807-1884]に因んで命名した.平頂海山ともいい,円形または長円形で火山性である.かつて頂上を海面上に現していた火山島が,波食によって頂上部が平坦にされたのち,沈降によって海山となったと考えられている.原因はプレート・テクトニクスが有力である.

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世界大百科事典(旧版)内のギヨーの言及

【海底地形】より

… 海裂gapabyssal gap―海嶺または海膨の中の狭い切れ目。 ギヨーtablemount―guyot平頂海山ともいう。比較的滑らかな平らな頂上をもつ海山。…

【海底地形】より

…火山体が沈降を続けるとサンゴ礁は環礁となっていく。また,あるものはそのまま沈水してギヨー(平頂海山)となる。これら海底火山の成因およびその後の沈降という機構には,まだ解明されていない点が多い。…

※「ギヨー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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