アメリカの電気工学者、数学者。情報理論の創始者。4月30日ミシガン州のゲイロードに生まれる。1936年ミシガン大学を卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院で電気工学、ついで数学を専攻、1940年に数学の学位を得た。当時MITには電気工学科に微分解析機で著名なブッシュ、数学教室に後年サイバネティックスの提唱者となったウィーナーがいた。1938年の修士論文で、リレー(継電器)接点回路網の解析に初めてブール代数を応用した。ここで、接点の開閉を論理変数の値0と1に対応させ、回路網の1対の端子が導通しているか否かを論理式によって表した。この理論は、計数型回路の設計をそれまでの経験的な技法から工学に発展させた点で画期的なものであった。1941年にベル・テレフォン研究所(後のベル研究所)に入り、第二次世界大戦中は通信の雑音や暗号解読などの研究に従事した。
1948年、『通信の数学的理論』A Mathematical Theory of Communicationと題する長大な論文を研究所の雑誌に発表した。この論文は、情報を数量的に扱う方法を考察して「情報量」の定義を与え、この概念を用いて通信の基本問題を論じたもので、通信の効率化をはじめ情報伝達におけるさまざまな問題がどのようにして理論的に取り扱われるかを明らかにした。論文の最初に情報伝送における通信系のモデルを提示、次に「情報源を確率過程として」とらえ、その確率分布に関して統計熱力学と同じ形の「エントロピー関数」を導入し、これによって情報量を定義した。これは、1928年のハートリーRalph V. L. Hartley(1888―1970)による選択の自由度による定義の直接の拡張であった。そして雑音のない通信路における符号化定理を与え、条件付きエントロピー、相互情報量、通信路容量などの概念を導入、雑音のある通信路を通して情報を伝送する場合の「シャノンの第二符号化定理」を導いた。本論文には、これら情報理論の基本概念や諸定理が与えられていただけでなく、データ圧縮の基礎理論である「速度‐ひずみ理論」の最初の考察が含まれていた。以後、研究を積み重ね、忠実度規範が与えられたときの源符号化の理論(1959)、多重通信路の出発点となった二方向通信路(1961)、オートマトン理論に関する研究などで重要な成果をあげた。1957年以来、MIT教授(電気工学、数学)、ベル・テレフォン研究所の顧問を兼ねた。1985年フランクリン賞受賞。2001年2月4日死去。
[常盤野和男]
『C・E・シャノン、W・ウィーヴァー著、長谷川淳・井上光洋訳『コミュニケーションの数学的理論』(1969・明治図書出版)』
アイルランド共和国南西部、リムリックの西郊24キロメートルにある新興都市。人口1118(2002国勢調査速報値)。シャノン川沿いに位置する。かつて大西洋横断航空路の中継給油基地であったが、シャノン国際空港内の自由貿易地区(120ヘクタール)を中核として、保税倉庫、工業団地が形成された。重量当り付加価値の高いピアノ、トランジスタラジオ、ダイヤモンド研摩用ドリルなどの製造企業が集積する。空港の乗降客数も90万人(1971)を超える。
[米田 巌]
アメリカの応用数学者。通信理論を一般化して情報理論をつくり上げた。ミシガン州ゲーロードに生まれ,ミシガン大学を卒業した。1940年にマサチューセッツ工科大学で数学の博士号を取得し,翌年からベル電話研究所に勤めた。57年にマサチューセッツ工科大学教授となった。1948年に発表した論文《通信の数学的理論》により情報理論を開いた。彼は,熱力学における無秩序の度合であるエントロピーを援用して,情報源に存在する不確実さの度合をエントロピーと呼んだ。情報を受けとることにより知識の不確実さの度合の減少する量をエントロピー減少量と定義し,その単位を〈ビット〉と名付けた。情報源の符号化と冗長度の問題を取り扱うとともに,通信路の伝送容量に上限が存在すること(シャノンの定理)を指摘した。画像のような情報量の多い信号の伝送にあたっては,情報理論に従って適正な符号化を行わないと,必要以上の周波数帯域幅を占用したり,逆にひずみを生ずることになる。このようにシャノンが始めた情報理論は,今日の通信技術に不可欠である。情報理論は拡張されて,暗号法,言語学,コンピューター設計などに広く応用されている。シャノンはまた,ブール代数によるスイッチ回路の解析やオートマトンについても重要な貢献をした。
執筆者:高橋 雄造
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…しかし同じ容量をもっていても,区別されない符号が並んでいるのと区別されるものが特定の順序で並んでいるのとでは情報の量が異なる。ハートリーは〈心理的要素を考慮に入れてきめなければならない〉として〈情報量〉の規定を避けたが,シャノンC.E.Shannonは48年,確率pの状態にある情報量Cを-logpで定義した。これだと,確率が小さいほど情報量が大きいという心理的事実と合うのである。…
…これは従来の対象別個別の研究の枠を超えて,生体から機械まで情報を主体として統一的に捉える新しい情報科学の成立を宣言する哲学であった。一方,C.E.シャノンは通信の本質を探究する中で,情報の伝達すなわち通信の現象にひそむ情報の本質構造を数学理論として認識し体系化することに成功した。これが1948年に発表された情報理論である。…
…これを回線容量ともいう。このような一般的定義以外に,とくに1948年にC.E.シャノンによって確立された情報理論による通信路の能力を表す数学的定義がある。この定義に従えば,通信容量は,注目する通信路に情報理論的に整合した情報源を接続したときに達成される情報伝送速度である。…
…この同一言語内の翻訳,言換えから〈意味〉というものの定義も導き出された。すなわち,情報理論の創始者であるC.E.シャノンはこの意味を〈翻訳の際の不変体〉と規定し,この規定がヤコブソンや文化記号論研究者たちによって取り入れられたのである。同様の考えはすでにC.S.パースやバフチンによっても述べられていた。…
※「シャノン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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