イスラム法に定める人頭税。心身健全で自由身分のジンミーの成年男子だけに課せられ,貨幣で徴収される。納税者の社会的地位や財産に応じ,旧ビザンティン領では1,2,4ディーナール,旧ササン朝領では12,24,48ディルハムの3段階に分けられていた。ジズヤは,コーラン(9:29)にみえ,ムハンマドはユダヤ教徒とキリスト教徒からジズヤを徴収したが,それは人頭税で,貨幣で徴収された。ウマイヤ朝の行政用語ではジズヤとハラージュは区別がなく,ともに征服地の住民から徴収される租税一般を意味していた。当時,地租と人頭税は併せて村落単位で一括徴収されていたので,両者を区別する必要がなく,両者を併せたものが旧ビザンティン領ではジズヤ,旧ササン朝領ではハラージュと呼ばれていたのである。したがって,とくに地租と人頭税とを区別する必要のある場合には,〈土地のジズヤ〉(地租),〈首のハラージュ〉(人頭税)などの用語も用いられた。ウマイヤ朝カリフ,ウマル2世がジンミーのイスラムへの改宗を奨励する政策をとるに及び,ジンミーとマワーリーの租税負担に差を設ける必要が生じ,地租は両者に課せられるが,人頭税はジンミーだけに課せられるようになり,人頭税ジズヤ,地租ハラージュという用語の区別が確定した。ジズヤは金額としてはわずかであったが,ジンミーにとってイスラムの支配に服するという象徴的意味があり,ときに〈ジズヤの民〉と称せられることもあり,ジンミーはジズヤを屈辱と感じた。
→人頭税
執筆者:嶋田 襄平
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イスラム法が定める人頭税。預言者ムハンマド(マホメット)がユダヤ教徒やキリスト教徒などに課した。イスラム法が整備される過程で人頭税と土地税(ハラージュ)の区分が明確化され、人頭税をジズヤとよぶようになった。土地税は、土地所有者の宗教、身分にかかわらず課税されるが、人頭税はイスラム教徒には課せられず、非イスラム教徒だけに課せられる。成人男子1人に対して年に金貨1枚が標準的な税額であったが、地域、時代により標準とは異なる税額があった。非イスラム教徒はジズヤの分だけイスラム教徒よりは過大に税を負担することになり、彼らには不満があった。現代ではイスラム諸国の多くはイスラム法によらない税体系をもち、ジズヤは課せられていない。
[後藤 明]
異教徒の支払う人頭税を意味するアラビア語。ムハンマドが,ユダヤ教徒およびキリスト教徒から徴収したのが最初である。彼らは啓典の民と称せられ,ジズヤの支払いと交換に,彼らの宗教の維持を許されていた。イスラーム法の規定では,ジズヤは自由身分の成年男子だけに課せられ,貨幣で徴収され,負担は非常に軽かった。
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…これも,人頭税と呼ばれることが多い。【森本 芳樹】
[イスラム]
イスラム法で人頭税を意味する用語はジズヤで,それはイスラムの主権のもとにある非イスラム教徒ジンミーの,自由身分で心身健全な成年男子のみに課せられ,貨幣で徴収された。行政用語としてはジズヤのほかにジャーリヤjāliya(原義は流亡者),その複数形ジャワーリーjawālīが,主としてエジプトで後世まで用いられた。…
※「ジズヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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