催合(読み)もやい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「催合」の意味・わかりやすい解説

催合
もやい

模合とも書き、もやうことで、共同とか共同生産を意味する。わが国で地域社会の人々が共同で事を行う伝統的慣行には、催合のほか結(ゆい)や手伝いなどがあるが、そのなかで、元来とりわけ共同性の強いのが催合である。また今日もっとも衰退が著しいのも催合であり、それは生産形態の変化に関係している。催合は全国の村々で行われていたが、結が農山村で盛んなのに対し、催合は漁村でより盛んな慣行である。漁村で催合が行われる機会の代表は地引網(じびきあみ)漁のときで、これには村共同の場合と特定の家どうしの共同の場合とがあるが、いずれも各家から資材労働力とを対等に提供しあい、漁獲物も平等に分配することが基本原則となる。

 農山村では村共有の山野を「もやい山」「入会(いりあい)山」とよぶ例は多いが、実際の共同生産の例は比較的少なく、伐採木材流し、屋根葺(ふ)き用の茅(かや)切りなどの機会にみられるのみである。そのほか、道普請(みちぶしん)や神社祭礼での奉仕を「もやい仕事」として行ったり、村共同の「もやい風呂(ぶろ)」や、共同で祝儀・不祝儀用の器具をもつ「もやい道具」の慣行があった村も各地にあったが、今日では減少している。

 なお、今日、沖縄や奄美(あまみ)地方では「模合」が盛んであるが、この地方でいう現在の模合とは本土の「頼母子講(たのもしこう)」であり、近隣、友人、知人同士が仲間をつくり、毎月定まった金銭を提供して成員のなかの1名が交代で受け取る、いわば民間の共同金融制度である。

[野口武徳]

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改訂新版 世界大百科事典 「催合」の意味・わかりやすい解説

催合 (もやい)

複数の人間が共同して作業や事業を行うこと。とくに共同作業に限定した場合はモヤイシゴトという。労力を提供したり,交換して行う共同労働ではなく,労力を出し合って一つの独立した作業や事業をするもので,共同して荒地を開墾したり,山に植林したりするのがそれである。そこには成果を平等に分配するという意味も込められている。モヤイが近年まで盛んに行われていたのは漁業である。とくに地引網漁は多くがモヤイであった。日本の伝統的な共同労働には労力を一方的に提供するテツダイ(手伝い),労力を交換するユイ(結),そしてこのモヤイがあったが,そのなかで最も共同性が強い。そのため,個人の所有観念が強まり,また競争が盛んになるとモヤイは急速に姿を消し,現在ではほとんど見られない。しかし,共同出資して共有の道具や機械を購入することをモヤイといったり,その品物や施設をモヤイ道具,モヤイ車,モヤイ井戸などということにその感覚は示されている。
ゆい
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百科事典マイペディア 「催合」の意味・わかりやすい解説

催合【もやい】

寄り合うこと。船をつなぐのは舫,労力の共同や利益の共有は催合と記す。催合は(ゆい),手伝などの共同慣行中最も共同性が強く,労働の共同のみならず生産手段の共有をも含む。漁村の地引網,貝や海藻の採取に盛んだが,農山村でも催合山(入会(いりあい)山),催合風呂があり,道や橋の催合仕事を行う。→入会
→関連項目田植

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