旧約聖書の一書。名称は《七十人訳聖書》に由来する。モーセ五書,あるいは〈律法(トーラー)〉の第2書をなす。第1書《創世記》がイスラエル民族の背景を成す家族史であるとすれば,この書は,直接,民族の誕生にかかわるできごとを記し,ユダヤ教,新約聖書キリスト教会で救済の範型として重んじられてきた。内容は3部に分かれる。第1部(1~15:21)はエジプトにおけるイスラエルの民の苦難とモーセの指導によるエジプト脱出,紅海(葦の海)渡渉を神の歴史への介入の奇跡として記す。第2部(15:22~18)は紅海の渡渉後,シナイ山に至る荒野彷徨中の食物・水不足に対するつぶやきと神の導きの物語(この部分は《民数記》10:11以下に続く)。第3部(19~40章)はシナイ山における神の諸種の誡命・律法の付与とそれに基づく神と民との契約の締結の記事(この部分は《レビ記》全体,さらに《民数記》10:10まで続く)である。第3部のシナイ契約伝承の中で古い伝承層に属するとされるのは,19~24,32~34章であり,十誡(20:2~17),《契約の書》(20:22~23章),契約締結(24章),第2の石の板(32:14~28)が含まれる。第1部では,モーセの誕生(2章),召命と神との出会い(3章),過越の祭の規定(12~13章),海の奇跡(12,14章),海の歌(15:1以下)などが有名である。全体として,苦難“から”の解放の自由と,神の戒め“へ”の服従の自由の結合という聖書宗教思想の特質としての〈自由〉を教えている。
執筆者:左近 淑
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『旧約聖書』2番目の書で、次の三つからなるイスラエル民族成立史を内容とする。
(1)エジプトからの脱出を指導したモーセの誕生、奇跡的守護、召命。エジプト王との交渉、エジプトへの多くの災禍、過越祭(すぎこしのまつり)の由来、そして紅海の奇跡による脱出成功。
(2)モーセ集団への神の導き、神の山でモーセ妻子と岳父の祭司エテロと再会。
(3)シナイ山における神の顕現、契約と十戒によるヤーウェ信仰を基盤にしたイスラエル宗教共同体の確立。
本書は紀元前10世紀末のヤーウェ資料、それから前760年ごろのエロヒム資料と前6世紀の祭司資料の複雑な融合からなっている。ことに紅海の奇跡によるエジプト脱出とシナイ契約は本書の二大テーマであり、それは歴史における神の救済信仰を生み出し、ユダヤ教およびキリスト教の信仰の根幹となる。またモーセの十戒(22章)は、現在も多くの人々の日常生活の倫理的規範になっている。
[吉田 泰]
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…旧約聖書《出エジプト記》20章後半部から23章中ごろまでに認められるイスラエル最古の法律集。21~22章の本体部分は,奴隷の取扱い,傷害や窃盗などの不法行為に関する法から成り,条件法を主体とするが,断言法や,〈目には目を,歯には歯を〉で知られるタリオ(同害報復)法をも含んでいる。…
…〈十戒〉とも書く。聖書,キリスト教世界の倫理の根幹を成す基本的誡命であり旧約聖書《出エジプト記》20章2~17節(ほぼ同じ並行記事は《申命記》5:6~21)にあり,特に〈モーセの十誡〉と呼ばれる。同書には,ほかにも10ないし12の誡めの組が見いだされているからである。…
※「出エジプト記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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