子守(読み)こもり

精選版 日本国語大辞典 「子守」の意味・読み・例文・類語

こ‐もり【子守】

[1] 〘名〙 子どもの面倒をみること。また、それをする人。もり。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「行(ゆく)水にかく砂手習地筭(ぢざん)も子守(こモリ)片手に置習ひ」
[2]
[一] 奈良県吉野にある水分神社(みくまりじんじゃ)をいう。子どもを守り育てる神として、信仰を集めた。
梁塵秘抄(1179頃)二「大峯通るには仏法修行する僧居たり 唯一人 若(にゃく)やこもりは頭を摩(な)でたまひ 八大童子は身を護る」
[二] 歌舞伎所作事。清元。増山金八作詞。清元斎兵衛作曲。五節句五変化舞踊「大和い手向五字(やまとがなたむけのいつもじ)」の一つ。文政六年(一八二三江戸森田座初演。江戸の市井の風俗であった、越後出身の子守り女を舞踊化したもの。他にも子守の舞踊化は数曲ある。

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デジタル大辞泉 「子守」の意味・読み・例文・類語

こもり【子守】[歌舞伎舞踊]

歌舞伎舞踊清元。増山金八作詞、清元斎兵衛作曲。五変化舞踊「大和い手向五字やまとがなたむけのいつもじ」の一つとして文政6年(1823)江戸森田座初演。江戸市井の子守女を舞踊化したもの。

こ‐もり【子守】

子供の面倒をみること。また、その人。おもり。
[補説]曲名別項。→子守
[類語]ベビーシッター

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改訂新版 世界大百科事典 「子守」の意味・わかりやすい解説

子守 (こもり)

乳幼児の守りをすること,またはその人のこと。家族に手が足りない時に,他家の娘を子守として雇う慣習は江戸時代からみられる。子守奉公の年齢は7歳ころから14~15歳までで,同じ地域内で行われる場合もあるが,農漁村から町家へ,あるいは漁村から富裕農家へ奉公に入ることが多かった。東北地方には,名子(なご)の娘が地主の家の子守を義務づけられていた例もある。つまり子守は概して貧家出身の娘が多く,したがっていやしめられる傾向もあり,その辛い境遇は哀調を帯びた子守歌にこめられている。しかし伊豆諸島のように,貧富の別なく,一定年齢の娘が他家の子守を行う慣習をもつ地域もあった。その場合,子守が一種の通過儀礼としての意義を有していたのである。子守奉公は通いにせよ住込みにせよ,いずれも2~3年の年季奉公で,盆暮に給金や反物,仕着(しきせ)などが与えられたが,金銭よりも現物給の方が一般的である。なお山口県の大島のように,子守たちどうしで遊び仲間をつくることもあった。子守が締める鉢巻のことは,新潟県でモリッコツツミ,山口県や福岡県の島々でモリコカツギと呼んでいる。

 ところで伊豆諸島では,子守と子守をされた子どうし,および後者と子守の家族との間で擬制的親族関係が結ばれる。すなわち利島では,子が生まれると,子守を頼む家に白米,うどん,麻,お茶などを贈る。子守娘は10~13歳で,期間は3年だが,子の家では子守の父母をモリオヤ,兄弟をモリアニイ,姉妹をモリアネイと呼んで,家族ぐるみの親密な交際をその後も続ける。新島の若郷では,生後50~100日の間に7~14歳の娘を子守に頼む。期間は3年で,子守はモリッコ,子守の両親はモリトウ,モリカアと呼ばれ,子の3歳と7歳の祝いをはじめ,その後も交際が続く。子は子守を相談相手とし,結婚式にも子守とモリカアが付き添う。八丈島の場合もほぼ同様である。
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子守 (こもり)

歌舞伎舞踊。清元。1823年(文政6)3月江戸森田座初演。五節句五変化《大和い手向五字(やまとかなたむけのいつもじ)》の一曲。演者岩井紫若(7世半四郎)。作詞増山金八。作曲清元斎兵衛。振付藤間大助,岩井吉五郎。江戸の街に多く見かけた子守女の舞踊化。越後出の子守がトンビに油揚をさらわれ,追いかけて出,人形を並べてのクドキ,座頭の振り,新潟おけさには綾竹の踊りなどがある。ほかに,子守が面を三つ使い分けて踊る常磐津の《三つ面子守》がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「子守」の意味・わかりやすい解説

子守
こもり

母親を助け,または母親に代って乳幼児の世話をすること,またはその人。近世以後昭和初期まで,女の子が他家に子守として雇われる子守奉公が一般に行われた。伊豆の新島では,子守の親と生児が仮の親子関係を結び,節供に子守とその親に贈り物をする習俗がみられた。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「子守」の解説

子守
(通称)
こもり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
大和い手向五字
初演
文政6.3(江戸・森田座)

子守
こもり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
文化6.4(江戸・中村座)

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世界大百科事典(旧版)内の子守の言及

【よしこの節】より

…それを変化させて,二上りの三味線で歌いだしたのが《よしこの節》の起りになっている。まもなく本調子に変わって,その旋律が清元の《子守》(1823)のなかに入り〈わたしゃどうでもこうでもあの人ばかりはあきらめられぬ じゃによって讃岐(さぬき)の金比羅(こんぴら)さんへ願でもかけましょか〉と,いまも歌い継がれている。《よしこの節》は京坂地方でも盛んに歌われるようになり,名古屋で起こって流行していた〈名古屋節〉を駆逐する勢いで広がった。…

※「子守」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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