日本大百科全書(ニッポニカ) 「岡部金治郎」の意味・わかりやすい解説
岡部金治郎
おかべきんじろう
(1896―1984)
電気工学者。名古屋に生まれる。東北帝国大学卒業後、母校助教授を経て1929年(昭和4)名古屋高等工業学校教授。1935年大阪帝国大学助教授、1939年教授。この間東北大学で極超短波(マイクロ波)を発生させるための分割陽極マグネトロンを発明した(1927)。この研究は、アメリカのゼネラル・エレクトリック社のA・W・ハルが1921年に発明した単陽極マグネトロンの発振管としての性能を大きく向上させたものである。当時はバルクハウゼン‐クルツ振動管(BK管)による24センチメートル程度のものが最短波長であったが、岡部は波長12センチメートルの安定した発振に成功した。これを契機としてレーダー用のマグネトロンの開発が急速に進んだ。その後岡部は四分割陽極構造についても実験を行い、現在の多分割陽極マグネトロン方式を確立した。1936年には極超短波の研究で朝日文化賞受賞。1944年文化勲章受章。大阪大学名誉教授。
[田中國昭]