翻訳|Easter
典礼暦年と移動祝祭日の中心をなすキリスト教の教会暦における最大の祭日。英語ではイースターといい,これは春の女神(元来は夜明けの女神)を意味するチュートン語に由来するといわれる。復活祭から聖霊降臨祭までの期間を復活節と呼ぶが,とくに復活徹夜祭をもって盛大に祝う。キリストの死と復活のできごとが,旧約の過越(すぎこし)の祭のときに起こったので,キリスト者にとってそのできごとは〈主の過越〉と呼ばれるようになり,これを記念する日はキリスト者の過越の祭として,その日取りもニサンの月(春分後)の14日(満月)過ぎの日曜日(イースター・サンデーEaster Sunday)に祝われるようになった。14日に祝う習慣もあったが,ニカエア公会議(325)以後一定したものとなった。春分は,ユリウス暦では3月25日になっていたが,公会議はアレクサンドリアの暦に従って3月21日とした。しかし,4年ごとに閏年を入れたのが多すぎて,正確な回帰年より暦が遅れていったので,復活祭も正しい春分を基準に祝うことができなくなった。そのため教会は暦を改訂することが必要になった。グレゴリウス暦は,1582年10月4日(木)の翌日を15日(金)とすることによって,週日の周期を崩さないで10日早め,これによって春分の日がおおむね3月21日になるようにした。また,紀元年号の下2桁が4で割り切れる年を閏年とするが,これが00で終わる場合,上2桁が4で割り切れる年だけを閏年にすることによって,1太陽年との差をわずか20秒台とすることができ,これによって復活祭も正確な春分の日から割り出して祝うことができるようになった。なお,復活祭は移動祝祭日であるため,年によって3月22日~4月25日の間を移動する。また,東方教会ではユリウス暦によって日取りを定めている。
執筆者:土屋 吉正 キリストの復活はマタイ,マルコ,ルカ,ヨハネの4福音書すべてに記されており,パウロは〈もしキリストがよみがえらなかったとすれば,あなたがたの信仰は空虚なものとなる〉(《コリント人への第1の手紙》15:17)と述べている。したがって復活祭はキリスト教の諸聖日の中でもとくに重要な日で,最も古くから祝われてきた。しかし,もともと死と復活という考え方は異教時代からのものであった。フェニキアおよびキプロス島などで崇拝されたアドニスの死と復活の祭礼や,ローマ帝国における植物の死と復活を表象した神アッティスの祭礼などは春分のころに行われ,キリストの受難,死,復活はこれらの祭礼と同化したものであるといわれている。北ヨーロッパの農民も春の芽ぶきを見て,死んだ草木の霊魂の復活を考えたことは当然であろう。その祝祭はキリスト教の外被に覆われながら長く存続した。復活祭前夜には他の異教的祭日と同様,公共の祝火がたかれ,人々は賛美歌を歌いながら炎が消えるまで火の周囲を回り,この火をとび越え,あるいはその灰とか燃えさしを畑に埋めて豊作を祈った。このときユダとよぶわら人形を焼く地方もあり,この火をユダ焼きとよぶ地方もある。また,復活祭当日の朝に卵(イースター・エッグ)を食べたり,色を塗ったゆで卵を贈り合う習慣があるが,卵は復活の象徴と考えられている。アメリカ合衆国では復活祭の翌日(イースター・マンデー)に,ホワイト・ハウスの庭で子どもたちの卵ころがし大会が行われる。
執筆者:三好 洋子
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キリストの復活を記念し祝う日で、教会暦のなかでもっとも古い祝日である。現代ギリシア語では復活祭はパスカpaschaといわれ、この語はユダヤ人の過越祭(すぎこしのまつり)をさすヘブライ語からきている。聖書によれば、ちょうどこの時期にキリストの復活がおこったとされているので、その復活という新しい意味を込めて、この古い呼称がそのまま受け継がれたのである。ところが、イギリス、アメリカでは復活祭はイースターEaster、ドイツではオースターンOsternとよばれ、これらはゲルマン民族の光と春の女神エオスターEosterから派生しているとされる。つまり、ユダヤ教の過越祭がキリスト教時代に新しい意味を得て、キリストの死と復活とを記念する祭りになり、のちにキリスト教がゲルマン民族に伝えられると、異教の春分祭と融合して現在の復活祭となったのである。
これが祭日としてキリスト教国で守られるようになったのは2世紀ごろからで、その日取りについては2世紀以降、多くの論争があった。東方教会ではユダヤ人の過越祭の日、すなわちニサンの月(太陽暦の3、4月)の14日(満月の夜)とされた。西方教会ではキリストの復活した日曜日を重視して、過越祭のころの日曜日、すなわち春分後の満月の次にくる日曜日に祝われた。325年の第1回ニカイア公会議で復活祭は日曜日に行うことが決定された。イースターに美しく彩色された卵を贈り物とする風習はかなり古くから各国で行われていたようである。
[野口 誠]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…たとえば,クリスマスは冬至の祭りに由来する。復活祭は,枯れた草木が山野を彩る変化に草木の霊魂の死と復活を信じた異教時代の祭りの趣旨を生かしたものである。聖霊降臨祭(ペンテコステ)は夏の収穫の豊かならんと祈る農民の心を満足させるものであった。…
…新約聖書にもみえている〈主の日(主日)〉,すなわち日曜日がその例である。だが祝祭日の大部分は,年一回祝う年祭であって,キリスト教徒がもっとも重要な年祭として早くから祝ったものは復活祭である。これもユダヤ教の過越の祭りと同じ日に祝われたが,やがてユダヤ教の祝日と重ねるべきではないとする立場が強まり,2~4世紀の復活祭日論争を経て,第1ニカエア公会議(325)で復活祭の計算法が定められた。…
…動物の料理のしかたにもおきてがあり,ミルクや乳製品と肉をまぜてはならないとされるので,肉をバターでいためたり,肉とチーズをいっしょに料理することも戒律に反する。食物にたいする宗教的規制が比較的ゆるやかであるとされるキリスト教でも,かつては灰の水曜日から復活祭前夜までの46日間は,日曜日以外は肉食が禁じられていたし,現在でも金曜日には肉食をせず,代りに魚を食べる習慣を守る人々も多い。肉食
【行事と食事】
年中行事の食事には,民族の差をこえて世界の巨大文明圏に共通するものが多い。…
…キリスト教の教会暦の最大の祭日である復活祭において最も中心となる典礼。4部からなる。…
※「復活祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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