飛行機や船などの場合のように、物体が流体(気体や液体)の中を運動するとき、周りの流体から力を受けるが、その力の、速度と反対向きの成分を抗力(あるいは抵抗力)という。飛行機や船が等速度で進行しているときには、プロペラなどによる推力が抗力とつり合っている。空から落下する雨滴も、地上近くでは重力と空気から受ける抗力とがつり合って等速度で落ちてくる。
抗力が生ずる原因は、周りの流体の種類、運動する物体の形、大きさ、速さなどによっていろいろである。小さな物体がゆっくり動くときには、周りの流体の粘性のために、速さに比例した力が働く。たとえば、半径aの球が小さな速度vで動くとき、6πηavの抗力を受ける。ηは周りの流体の粘性率である。これをストークスの法則という。この法則が成立するのはρva/η(レイノルズ数、ρは流体の密度)が1より十分小さいときで、速度が大きくなると抗力はこの式で与えられるより増大する。
さらに速度が大きくなると、物体の後方に渦ができ、これが抗力を急激に増大させる。自動車、列車、飛行機や船など、高速度で運動する物体は、この抗力を小さくするよう、その形が設計されている。さらに速度が増大し、周りの流体中の音波の速度より大きくなると、物体は衝撃波をつくりつつ進み、物体の前面の圧力が非常に高くなるので、抗力は非常に大きくなる。船の場合には水面上に波をつくることも抗力を大きくする。固体の表面を別の物体が滑りながら、また転がりながら運動するとき、摩擦により運動方向に逆向きに働く力も抗力とよばれる。
[和田八三久]
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机の上にのせた物体が下向きの重力を受けているにもかかわらず静止し続けるのは,重力を打ち消す上向きの力を机が物体に及ぼしているためと考えられる。これは面が物体の侵入を防ぐために抵抗する力であるから抗力と呼ばれ,面に垂直なので垂直抗力normal forceともいう。物体が面に沿って動いたり動こうとするときには,一般にはそれを妨げる向きに摩擦力が働くので,これと垂直抗力とを合わせたものを抗力ということが多い。垂直抗力だけしか働かない面は滑らかであるという。また航空力学などでは,流体中を運動する物体に流体が及ぼす力のうち,物体の運動を妨げる向きに働くものを抗力dragという。
執筆者:小出 昭一郎
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 パラグライダー用語辞典について 情報
…小型のエンジンと推進器をもち,自力で離陸,上昇し,空中でエンジンを止めて滑空を行うものはモーターグライダーmotor gliderという。
[滑空の原理]
固定翼をつけた航空機は,前進することで翼に働く空気力を利用して空中に浮くことができるが,この空気力のうち,進行方向に垂直上向きに働く力を揚力,進行方向に平行で後向きに働く力を抗力と呼ぶ。定常飛行では揚力は重力とつり合い,推進器を備えた飛行機では,水平飛行ができて推力と抗力とがつり合う。…
…抵抗力,または抗力ということもある。流体中を運動する物体に働く力のうちで,進行方向と逆方向の成分。…
…ふつうの物体は空気の流れの中に置かれると,流れの方向に押される力,つまり空気抵抗を受ける。同じように飛行機も空気抵抗(抗力)を受けるが,ただ飛行機が一般の物体と違う点は,その翼に抗力と同時に流れに直角上向きの力,すなわち揚力を生ずることである。 翼に揚力を生ずる現象は,原理的には野球のボールのカーブと同じである(図2-a)。…
…
【翼の働き】
翼に限らず物体が空気中を動くと,空気抵抗を受けると同時に,多くの場合大なり小なり上向きか下向きの空気の力も受ける。そこで動く物体に働くこれらの空気力を,進行方向に平行な抗力(抵抗といってもよい)と直角な揚力とに分けて考える。翼は他の物体に比べ,とくに大きな揚力が発生し,逆に抗力は小さく,揚力が抗力の数十倍にも達する。…
※「抗力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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