法律用語。日本の民法ではこの語が2ヵ所で使われているが,その意味は若干異なる。(1)A所有の土地にB所有の樹木等が植えつけられた場合,樹木等は土地への付合によりAの所有となるが,Bが〈権原〉に基づき植栽を行った場合にはBはその所有権を保有しうる(民法242条)。田畑の小作で重要な意味をもつ規定であり,ここにいう権原とは地上権,永小作権,賃借権など正当な土地利用権をさす。(2)ある人が物(動産・不動産)を占有している場合,その占有を取得するに至った原因を〈権原〉という(占有することを正当とするかどうかを問わない)。地上権・質権等の設定行為,売買・貸借・寄託等の債権契約などをいう。取得された占有が正当(適法)である(正当な所有者から借りた)場合を,とくに〈正権原に基づく占有〉と呼ぶ。なお,取得時効は自主占有を要件とするが,他主占有との区別は〈権原〉の性質により客観的に定まる(売買なら自主占有,貸借なら他主占有。民法185条参照)。
執筆者:安永 正昭
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…ちなみに近代法においては,〈Aは(占有しているが)所有権者ではない,自分Bこそが所有権者である〉〈いや,自分Aこそが所有権者である〉という形の主張が対立することになる。このような場合の〈知行すべき由緒〉は,近代法の〈占有すべき(占有を正当ならしめる)権利(本権ないし権原)〉と似ているので,その限りで〈知行〉は占有possessioに類似の概念だとする学説が成り立ちそうにみえる。しかし,〈由緒〉は知行の取得原因たる事実(売買,交換,相続,等々)であって,権利ではない。…
※「権原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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