漂白に使用される化学試剤。漂白剤は対象物に含まれる有色物質と化学反応を起こし分解ないし変化させ無色物質にする作用をもつが,大きく分けて酸化反応を利用するものと還元反応を利用するものがある。そのほかに染色工業で使用される白さを増すための蛍光増白剤があるが,これは目的は類似しているが漂白剤とは区別すべきである。
さらし粉は代表的な酸化性漂白剤で,主成分はCa(ClO)2・CaCl2・2H2Oである。有効成分のCa(ClO)2が酸素を発生し酸化漂白するが,その際酸化に有効に働く塩素量を有効塩素量といい,酸化力の目安とする。さらし粉は石灰乳に塩素ガスを通して製造するが,工業製品の形態としては水に溶解し液状としたさらし液,通常のさらし粉,および純度の高い高度さらし粉がある。有効塩素量はさらし液が8~10%,さらし粉が約30%,高度さらし粉が70~80%である。さらし粉の代りにナトリウム塩の次亜塩素酸ナトリウムNaClOも水溶液として使用される。このほか代表的な塩素系酸化漂白剤は亜塩素酸ナトリウムNaClO2で,酸化力はさらし粉の4~5倍,高度さらし粉の2~3倍,酸化電位が繊維漂白に最適な範囲で,さらし粉に比べ繊維を傷める欠点が少ない。過酸化水素H2O2は紙,パルプ,繊維,食品などの漂白に使用される高級な漂白剤で,漂白後,水しか残らない特徴があるが高価である。過酸化水素は工業的には現在アルキルアントラキノンの酸化還元を利用して製造される。微量の金属イオンに対し敏感である。
亜硫酸ガスSO2,二亜硫酸ナトリウム(酸性亜硫酸ナトリウム)Na2S2O5,ハイドロサルファイト(亜ジチオン酸ナトリウム)Na2S2O4が代表的である。羊毛や絹など動物繊維は塩素系の漂白剤で処理するとかえって黄ばむので,過酸化水素のほか,これらの還元性漂白剤で漂白する。ハイドロサルファイトは染色助剤,抜染剤としても有用である。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
糸、布などの繊維や食品などに含まれる有色物質や付着色素を化学的に分解し、製品を白くする薬剤をいう。漂白剤には化学的に酸化作用を利用する酸化漂白剤と、還元作用を利用する還元漂白剤がある(還元漂白剤は、絹、羊毛など限られた繊維にしか使われない)。
繊維による漂白剤の選択は、繊維の脆化(ぜいか)、黄変、塩素吸着の有無、漂白効果などを考慮してなされる。綿などのセルロース系繊維には、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、さらし粉が使われる。アクリルおよびポリエステル繊維には亜塩素酸ナトリウムが用いられる。ナイロンには、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酢酸などの酸化剤が使われる。ナイロンは耐塩素性が弱く黄変しやすいので、塩素系薬剤を使用したあとには脱塩素処理を行う必要がある。
絹の漂白には、過酸化水素またはハイドロサルファイトが用いられる。塩素系漂白剤を使うと黄変し、繊維を脆化させる場合がある。羊毛には、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤と、ハイドロサルファイトを用いる還元漂白とがあり、酸化漂白後に還元漂白すると鮮明な白色が得られる。蛍光増白剤を併用することが多い。
家庭用の汎用(はんよう)漂白剤としては、最近、過炭酸ナトリウムがよく用いられる。
食品の色を白くするために許可されている漂白剤には、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜硫酸カリウム、次亜硫酸ナトリウム、過酸化水素などがあり、それぞれ食品中の残存量が決められている。
[篠塚則子]
漂白に使用する薬剤.化学的漂白剤と光学的漂白剤とに大別され,前者はさらに還元漂白剤と酸化漂白剤とに分類される.還元漂白剤には,ハイドロサルファイトNa2S2O3,亜硫酸ガスSO2,酸性亜硫酸H2SO3塩などがあり,絹および羊毛に用いられる.一般に,繊維の脆化が少なく,還元により淡色になった色素が空気酸化により復色することが多い.酸化漂白剤には,過酸化水素H2O2,過マンガン酸カリウムKMnO4,過ホウ素酸ナトリウムNaBO3・4H2Oなどの過酸化物系のものと,さらし粉CaCl・ClO,次亜塩素酸ナトリウムNaClO,亜塩素酸ナトリウムNaClO2などの塩素系化合物がある.酸化処理は分解生成物による復色は少なく,広く採用されているが,ナイロンなどは塩素系化合物に弱いので,後処理の容易なH2O2による漂白が一般的である.麻類には天日さらしがあるが,光学的漂白剤には蛍光増白剤があり,みずから発する紫~青の蛍光で物理的に白さを与える.そのほか,使用限界が決められた食品漂白剤(亜塩素酸塩,過酸化水素,亜硫酸塩,酸性亜硫酸塩など)もある.食品に使用する際は含有表示が義務づけられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…すなわち,(1)イギリス,フランスを中心として酸・アルカリ工業が成立した時期(18世紀後半),(2)ドイツを中心に染料の合成から始まった石炭・タール系有機合成化学工業の成立期(19世紀),(3)アメリカを中心に石油・天然ガスを原料とする高分子化学工業が発達した時期(20世紀前半),(4)石油化学工業の発達した時期(20世紀後半)である。
[第1期 酸・アルカリ工業の成立]
1760年代に始まるイギリスの産業革命によって繊維工業が急成長したため,18世紀後半には漂白工程の能率向上と漂白剤の安定入手が求められた。繊維の漂白は,それまで,海藻や木炭などの灰汁に浸し,天日にさらし,それから酸敗ミルクで中和するという方法であったが,この時代にはソーダと硫酸が使われるようになった。…
※「漂白剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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