化学式Na2O2。金属ナトリウムを二酸化炭素を含まない乾燥空気を通しながら300℃に加熱してつくる。淡黄色粉末。正方晶系。加熱により黄色に変わるが冷やすともとに戻る。融点460℃。比重2.805。657℃で分解する。常温で水と激しく反応して酸素を発生し,水酸化ナトリウムに変化する。冷水溶液または酸性水溶液では過酸化水素を生ずる。この冷水溶液を真空蒸留すると8水和物が得られる。無水和物を二酸化炭素を含まない湿った空気中に放置しても8水和物になる。エチルアルコールと反応すると過酸化水素ナトリウムを生ずる。強力な酸化剤で硫黄に触れると発火し,湿った空気中でアルミニウム粉末や炭と混合すると爆発する。有機物と混ぜると発火または爆発を起こす。二酸化炭素と反応して炭酸ナトリウムと酸素を生じ,一酸化炭素と反応して炭酸ナトリウムになる。ケイ酸塩,天然物と共融すると,これらを分解するので,分析の前処理に利用される。構造は塩化水銀(Ⅰ) Hg2Cl2に似たNa⁺[O-O]2⁻Na⁺の連なりであるとされている。超酸化ナトリウムsodium hyperoxide(またはsodium superoxide)Na(O2)を過酸化ナトリウムに含めることもある。これはNa2O2を500℃,300気圧の酸素と作用させて得られる黄色結晶で,黄鉄鉱Fe(S2)型の乱れた構造をもつ。取扱い上の注意としては,分解しやすいから湿気を遮断し,密栓保存する。有機物や酸化されやすいものと接触しないよう注意する。
酸化漂白剤,過酸化物や過ホウ酸塩などの製造用,分析試薬,二酸化炭素吸収剤に用いられる。融解して小立方体に固めたものはオキソンOxoneの商品名で酸素発生剤として市販。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Na2O2(77.98).金属ナトリウムを二酸化炭素を含まない乾燥空気中で300 ℃ に熱して得られる.淡黄色の粉末.正方晶系.融点460 ℃.密度2.81 g cm-3.500 ℃ まで安定である.きわめて吸湿性で,水とはげしく反応して酸素を発生し,水酸化ナトリウムとなる.冷水または酸性水溶液では過酸化水素を生じる.強酸化剤でCO2と反応してNa2CO3と O2 を,COとではNa2CO3を生じる.強アルカリ性水溶液中で,CrⅢをCrO42-に酸化する.ケイ酸塩の融解酸化にも用いられる(過酸化物融解).融解したNa2O2はPtを侵すので,Ni,Au,またはAgのるつぼを用いる.硫黄,有機物と混合すると発火または爆発する.また,湿った空気中で粉末アルミニウム,炭と混合しても爆発する.酸化剤,漂白剤,殺菌,薬用せっけん,有機過酸化物の製造,分析試薬などに用いられる.密栓保存する.皮膚や粘膜をおかす.[CAS 1313-60-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ナトリウムと酸素の化合物の一つ。過酸化ソーダともいう。金属ナトリウムをアルミニウム製の皿の上に置き、二酸化炭素を含まない乾燥空気を送って300~400℃で燃焼させると、無水物が製造される。また、氷冷した水酸化ナトリウム水溶液に過酸化水素を加えることによって、八水和物(式量222.1、融点30℃)が得られる。無水物は淡黄色粉末、八水和物は無色の六方晶系の結晶である。いずれも水に容易に溶け、水酸化ナトリウムと過酸化水素とになるが、常温以上では過酸化水素が分解して酸素を発生する。強い酸化剤であり、二酸化炭素を吸収して炭酸ナトリウムと酸素を、また一酸化炭素と反応して炭酸ナトリウムを生ずる。溶融物は金、ニッケル以外の各種の金属を侵し酸化する。有機物と混合すれば発火または爆発する。動植物性繊維、骨などの漂白、難溶性物質の融解処理などに使用されるほか、過酸化物の製造原料ともなる。
[鳥居泰男]
分子式 | Na2O2 |
式量 | 78.0 |
融点 | 460℃ |
沸点 | ― |
比重 | 2.805 |
分解点 | 657℃ |
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…化学式Na2O。ナトリウムの酸化物には,この組成のほかに過酸化物イオンO22-を含む過酸化ナトリウムNa2O2がある。Na2Oは無色の粉末。…
※「過酸化ナトリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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