沖縄地方の言葉による「八・八・八・六」音を基調とする歌。天皇陛下は皇太子時代に沖縄の歴史や文学を専門家から学び、琉歌も作り始めた。用字用語、表記法の規範となる琉球国王の詠んだ琉歌を自分でノートに書き出すなど、ほぼ独学で学んだという。式典で披露された2首を含め、沖縄海洋博(1975~76年)の開、閉会式出席に伴う沖縄訪問に際して詠んだ6首が歌集「ともしび」に収められている。
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沖縄本島を中心にして生まれた叙情歌。八・八・八・六音の三十音からなる定型の短歌が一般であるが、仲風(なかふう)とよばれる和歌風の音数(五・七)の混じったものや、八音を連ねて最後を六音で結ぶ長歌形式のものもある。音楽と舞踊と深く結び付いて発達し、現代に受け継がれている。
琉歌の成立は15、6世紀ごろにさかのぼれる。その母胎はオモロ、ウムイ、クェーナなどという沖縄諸島に伝えられた叙事的な古謡に求められる。オモロは、本来不定型で複雑な歌形をもち、主題も祭式にかかわるものが多いが、後期になると、人や労働にかかわる主題をもつもののなかから琉歌とまったく同様の音数のものが現れ、琉歌への改作も行われるようになる。ちょうどこのころ入ってきた三線(さんしん)楽器は、それまで手拍子や鼓(つづみ)にあわせて謡われてきた古謡の悠長で長い歌形を、短く緊張させて律動的に定型化させる主因となったと思われる。なお、八・八・八・六音の成立について、本土の近世小唄(こうた)の影響を考える説もある。琉歌の主題は、恋歌、四季歌、祝歌、教訓歌、羇旅(きりょ)歌のほか、固有の民俗、信仰、生活などを背景にしたものもあり、多彩である。しかし圧倒的に多いのが恋愛歌で、秀作も多く、琉歌が個人の叙情を歌い上げるのにふさわしい歌形であることを思わせる。「七(ナナ)よみとはたいんかせかけておきゆて 里(サトウ)があかいづ羽御衣(バニンス)よすらね」(ごく上等のかせ糸をかけておいて、あのかたのために蜻蛉(とんぼ)の羽のように美しい着物を作ってあげたい)。
琉歌の作者は、王、首里(しゅり)の貴族・士族階級の人々から農村の女性や遊女に至るまで、階層・性別を問わず幅広く、現在も沖縄の人々にその音数律が親しまれている。恩納(おんな)岳の麓(ふもと)に生活した恩納なべ、那覇の遊廓(ゆうかく)に生きたよしや思鶴(うみつる)は、際だって個性的な歌を残して有名であるが、ほかに教養ある男性歌人の数人を別にすれば、優れた作品のほとんどは「読み人知らず」の歌である。とくに女性の心を通じて結晶したものに秀作が多いところに、琉歌のもう一つの側面がうかがわれる。『琉歌百控(ひゃっこう)』は1795~1802年に編纂(へんさん)された古琉歌集で、613首が収められている。音楽中心の「歌う歌」として編集された代表的なものである。後になると「読む歌」としての体裁をとった琉歌集も編まれるようになる。『古今琉歌集』(1895)はその代表的なもので、節(曲)による分類を避け、『古今和歌集』に倣って主題による区分けをしたものである。また、3000首を収録した『標音評釈琉歌全集』(1968)は、読み方が表記されて学問的価値も高く、歌数の点でも琉歌の集大成といえるものである。
[外間守善]
『外間守善編『鑑賞日本古典文学25 南島文学』(1976・角川書店)』▽『外間守善・比嘉実・仲程昌徳編『南島歌謡大成Ⅱ 沖縄篇下』(1980・角川書店)』
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…ウムイとオモロは本来同じものであるが,地方のウムイが中央で整理され,歌形をととのえていったものがオモロである。(3)抒情文学 奄美の島歌(しまうた),沖縄の琉歌,宮古のクイチャー,トーガニ,シュンカニ,八重山の節歌(ふしうた),トゥバラーマ,スンカニなどがある。島歌,琉歌,節歌などは総括的な呼称で,それぞれの中でまた長歌形と短歌形に分けることができる。…
…ウムイとオモロは本来同じものであるが,地方のウムイが中央で整理され,歌形をととのえていったものがオモロである。(3)抒情文学 奄美の島歌(しまうた),沖縄の琉歌,宮古のクイチャー,トーガニ,シュンカニ,八重山の節歌(ふしうた),トゥバラーマ,スンカニなどがある。島歌,琉歌,節歌などは総括的な呼称で,それぞれの中でまた長歌形と短歌形に分けることができる。…
…たとえば,那覇nːhwa→なは,比嘉hwiza→ひが,金城kanaguşiku→きんじょう,などのようである。また,琉歌など歌謡を表記するために一種のかなづかいと当て字の慣習が成立し,固定化した。一方,文盲者の間では商取引や納税の際に,〈スーチューマーsuːcuːmː〉と呼ばれる一種の象形的な文字や,結縄(けつじよう)文字が用いられた。…
※「琉歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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