明治時代の啓蒙(けいもう)主義者、政治家。文政(ぶんせい)13年9月15日、美濃(みの)国(岐阜県)不破(ふわ)郡岩手村(現、垂井(たるい)町)に生まれる。孝平は通称、名は孟恪。淡崖(たんがい)と号した。長じて京都ついで江戸で儒学を修め、幕末の外国船来航を契機に蘭学(らんがく)を学び、長崎にも遊学した。1862年(文久2)幕府が設立した蕃書調所(ばんしょしらべしょ)の教授方出役などに就任したが、明治維新を経て新政府の官僚となった。当初徴士(ちょうし)から会計官権判事(ごんはんじ)、公議所副議長などの役職を歴任し、のちに兵庫県令、元老院議官、文部少輔(しょうゆう)、貴族院議員を務め、男爵となる。とくに1874年(明治7)設立の明六(めいろく)社に加わり、『明六雑誌』に多くの論稿を発表するなど、啓蒙家としての活動が知られるとともに、地租改正の必要を主張した「田租改革建議」(1870)の起草など、注目すべき意見をもっていた。しかし、その立場は明治政府の啓蒙主義の枠内にとどまっていた。1877年には柳楢悦(やなぎならよし)とともに総代となって東京数学会社をおこした。明治31年7月5日没。
[石塚裕道 2016年8月19日]
明治前期の経済学者,開明的官僚。孝平は通称で名は孟恪という。美濃国(岐阜県)不破郡岩手村出身。当初漢学を修めたが,ペリー来航を機に杉田成卿・伊東玄朴らに蘭学を学んで,幕府の蕃書調所の教授方出役となり数学,文法,翻訳,作文などを教授し,〈経済〉の訳語を確定し,1867年(慶応3)日本最初の西洋経済学の翻訳書《経済小学》(エリスW.Ellis著《Outline of Social Economy》のオランダ語訳からの重訳)を著した。68年(明治1)明治新政府の徴士,議事体裁取調係となり,兵庫県令を経て,76年元老院議官となった。この間,1870年に〈田租改正建議〉を行い地租改正の必要を主張し,地方官会議議長として地租改正法の成立に尽くし,また,明六社同人となり《明六雑誌》に健筆をふるった。文部少輔,高等法院陪席裁判官,憲法取調委員を歴任,また東京学士院会員に推され,90年貴族院勅選議員となった。死の直前,文化発展の功により男爵。また,考古学界の先駆者としても知られ,東京人類学会初代会長(1887-95)を務めた。英学者の神田乃武は養嗣子。
執筆者:佐藤 能丸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(中野実)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「新訂 政治家人名事典 明治~昭和」(2003年刊)新訂 政治家人名事典 明治~昭和について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1830.9.15~98.7.5
幕末~明治期の啓蒙思想家・官僚。美濃国生れ。名は孟恪。当初儒学を学んだが,ペリー来航を機に蘭学に転じ,1862年(文久2)蕃書調所教授出役,68年(明治元)開成所頭取となり,その後は新政府に出仕,明六社同人にも名を連ねた。明治初年に「税法改革ノ儀」「田租改革建議」を提出し,地租改正に大きな影響を与えた。兵庫県令・元老院議官・貴族院議員などを歴任。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…公議所では勧農,租税,駅逓,貨幣,外交,貿易,鉱山,度量衡,商業,開墾,学校,出版,刑法,軍律,海軍,宗教,陸軍,営繕,水利などを議事の分課とし,積極的な審議を行った。とくに議長代行森有礼,副議長神田孝平ら開明派が審議をリードし,里数改正,通称の廃止,切腹の禁止,火葬廃止,帯刀廃止,入れ墨廃止,人身売買禁止,穢多非人廃止,地租改正など多くの改革案をとりあげて審議した。もちろん保守派の強い反対もあり,すべて答申されたわけではないが,活発な審議を通じて啓蒙的な役割を果たしたことは注目される。…
…日本で最初に設立された学会で,日本数学会の前身。1877年9月,神田孝平(たかひら)の提案により日本中の数学者が一堂に会して発足した学会である。初代の総代は神田孝平と柳楢悦(ならよし)で,後に岡本則録(のりふみ)が社長となる。…
…彼らによって日本のすみずみにまで数学が広まったといってよいであろう。明治10年(1877),神田孝平(1830‐98)の提案で,日本中の数学者を集めて学会を作ることになった。これが日本最初の学会である日本数学会の前身の東京数学会社である。…
※「神田孝平」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加