教師中心、教科書中心の詰め込み教育に対して、子供の興味・関心や生活経験に根ざした主体的な学習活動を重視する学習方式をいう。子供の自発性を軸とした問題解決的学習活動を通じて、生きて働く知識や技能を形成することを目的とする。第二次世界大戦前の権威主義的な詰め込み教育の反省にたって、戦後、デューイの経験主義教育を理論的背景としながら、新教育の中核的学習方法として推奨された。
経験は教育にとって不可欠の要素であるが、一般に、授業において、教育内容としての客観的な知識や技能を子供に伝達するための手段として、子供の経験が利用される場合が多い。子供の日常経験から類推させて新しい知識を獲得させたり、また、見学や観察など子供の直接経験を踏まえて事象の本質を把握させたりする。
しかし経験学習の本質は、子供の外にある客観的な知識や技能を定着させるために子供の経験を利用するのではなく、子供自身の経験を発展させ、経験を質的に高め、再構成することにある。具体的には、学習主体である子供が、生活環境に働きかけ、そのなかから問題を発見し、その問題を解決していくなかで、子供の経験を質的に高め、再構成していくよう授業を組織するのが経験学習である。教師中心で、教科書内容の一方的伝達を授業と考える傾向の強い今日、経験学習の再認識が望まれる。
[伊東亮三]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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