金井沢碑(読み)かないざわのひ

日本歴史地名大系 「金井沢碑」の解説

金井沢碑
かないざわのひ

[現在地名]高崎市山名町 金井沢

からす川に向かって東流する金井沢川上流左岸の山中にある。碑は付近の農家で洗濯石に使われていたが、この家に不幸が続きようやく今の場所におさまったと伝える。国指定特別史跡。碑石は硬質の輝石安山岩の自然石。高さ一・一メートル、厚さ〇・六メートル。碑文は九行一一二字で、文字は楷体の薬研彫である。

<資料は省略されています>

「下賛」は烏川を挟んだ対岸東方下佐野しもさのにあてられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「金井沢碑」の意味・わかりやすい解説

金井沢碑 (かないざわひ)

上野(こうずけ)三碑の一つ。〈神亀三年〉(726)の年号をもつ,高さ1.1m,幅0.9mの輝石安山岩自然石の碑。江戸時代中ごろからその存在が知られており,現在高崎市山名町金井沢の南斜面にあるが,古くは下の川沿いにあったとも伝えられる。碑文は平坦な一面に9行112字を楷書体で彫るが,刻みが浅く風化のため解読の困難な個所もある。上野国群馬郡下賛(しもさぬ)郷高田里にある3家の子孫一族が,その祖先のために知識を結び天地に誓願したことを記す。碑形は統一新羅石碑に共通するものがあり,用字には〈知識〉〈如是〉など仏教用語がみられ,また律令文書に類した書法がとられていることなど,この碑の建立された背景に渡来人の存在および律令体制,仏教に通じた人々のあったことを示す。地方豪族の家族関係や婚姻形態を知る上で,また山ノ上碑(681),山上石造多層塔(801)と併せ,この地方における仏教信仰様相を伝えて貴重である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金井沢碑」の意味・わかりやすい解説

金井沢碑
かないざわひ

群馬県高崎市山名(やまな)町金井沢に所在する石碑。多胡碑(たごひ)、山上碑(やまのうえひ)とともに上野三碑(こうずけさんぴ)とよばれる(三碑とも特別史跡)。高さ約110センチメートル、幅約70センチメートル、厚さ約65センチメートルの輝石安山岩の川原石に、9行112字の漢字を薬研彫(やげんぼり)で刻している。碑文は、神亀(じんき)3年(726)、上野国群馬郡下賛(しもさぬ)郷高田里の三家(みやけ)の一族9人が仏教に帰依(きえ)し、祖先および父母の菩提(ぼだい)のためにその信仰を表白したもので、上野国における仏教浸透の具体的資料として重要である。

[久保哲三 2018年5月21日]

 2017年(平成29)、金井沢碑を含む「上野三碑」は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」に登録された。

[編集部 2018年5月21日]

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国指定史跡ガイド 「金井沢碑」の解説

かないざわひ【金井沢碑】


群馬県高崎市山名町にある古碑。金井沢に臨む丘陵の南斜面中腹に、平坦に造成されたところにある。江戸時代の中ごろに出土し、かつては小川のほとりで付近の農家の洗濯板として使用されていたといわれる碑で、高さ110cm、幅70cm、厚さ65cmの輝石安山岩に9行112文字が刻まれている。726年(神亀3)に記されたその内容は、上野国(こうずけのくに)群馬郡下賛(下佐野)郷高田里の三家(屯倉(みやけ)の説もある)の子孫が、祖先の菩提を願うために仏に誓願している。こうした点から、郷里制の施行と奈良時代における民間への仏教信仰の浸透を知ることができ、1921年(大正10)に国の史跡、1954年(昭和29)には特別史跡に指定された。現在は覆屋が設置されている。上信電鉄根小屋駅から徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金井沢碑」の意味・わかりやすい解説

金井沢碑
かないざわのひ

群馬県高崎市山名町 (旧多野郡八幡村山名字金井沢) にある石碑。多胡碑,山ノ上碑とともに上野三碑 (こうずけさんぴ) といわれる。碑文は摩滅が多いが,神亀3 (726) 年に群馬郡高田里の三家の子孫が,先祖や父母のために協力してこの石文 (いしぶみ) を奉ったという趣旨が記されている。江戸時代の発見といわれる。

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百科事典マイペディア 「金井沢碑」の意味・わかりやすい解説

金井沢碑【かないざわのひ】

上野三碑

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