フッサール現象学の用語で,自我共同体,モナド共同体とも呼ばれる。彼によれば,私にとって存在するものはすべて,その存在の意味を,私自身の意識領域から汲みとるのであるから,〈我在り〉が私の原初的世界にとっての根源的な志向的根拠である。それゆえ彼は,哲学的諸学科のうち本来第1の学科は,独我論的な自我論であるとした。しかしその反面,自然的世界や文化的世界がわれわれ万人に妥当する客観的世界であることもまた自明である。では万人に共通のこの客観性はいかにして構成されうるのか。フッサールによれば〈超越論的われわれ〉として客観的世界を構成するのが間主観性である。さらに彼はこの間主観性についても,自我にとって最初の他者である〈汝〉の構成から出発して,そのような自我共同体が構成されるまでの諸段階を解明しようとした。そのさいに他我認識の根本原理と見なされたのが感情移入の理論である。
→現象学
執筆者:立松 弘孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
現象学派の哲学者たちは、自己意識(われ思う)の直証的確実性から出発するとき、自我と等しい権利をもつ主観性である他我との共同、つまり間主観性、およびそれをよりどころとする対象世界の客観的・公共的な把握はいかにして基礎づけられるかという問題に腐心した。フッサールの他我論は「類比による統覚」とよばれるもので、他の身体=物体が私の身体(これは単に物体ではない)と「対(つい)」を組み、そのことによって他の身体=物体に他我の身体という「意味の転移」が成就(じょうじゅ)すると説く。ただし、「類比による統覚」は単なる類推作用ではなく、「間接現前」とよばれる一種の現前であるとされる。なお、問題場面は異なるが、ヘーゲルの『精神現象学』にすでに、「われわれである自我、自我であるわれわれ」という共同性の観点が提出されているのは、特筆大書に値する。
[山崎庸佑]
『山崎庸佑著『現象学の展開』(1974・新曜社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかしそれにしても,世界はもとより各事物も個々の主観に対してのみ存在しているのではない。それゆえ超越論的主観性は究極的には間主観性であるとされ,そしてこのことと関連して他我認識の方法が,意識主観の身体性や歴史性の問題と絡めて考察される。これらの諸問題に加えて,後期のフッサールは諸科学の成立基盤としての〈生活世界〉の問題をも主題化して,科学的認識の成立過程をいっそう具体的に解明しようとした。…
※「間主観性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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