独我論(読み)どくがろん(英語表記)solipsism 英語

日本大百科全書(ニッポニカ)「独我論」の解説

独我論
どくがろん
solipsism 英語
Solipsismus ドイツ語
solipsisme フランス語

独在論唯我論ともいう。ラテン語のsolus(ただ……だけ)とipse(自己)と-ism(主義)を合成してできた語。(1)理論的には、自分以外の他人に自分と同じ自我他我)が存在することを否定する考え方。「私たちは観念のある集まりによって、私たち自身に似た思考と運動の別個の原理が表れていると考えるようになる」(バークリー)。(2)実践的には、個的自我の尊重・実現に人生の唯一絶対の価値があるという考え方。「私は、私がありうるすべてでありたい。他人が類似したものであるかが、どうして私にかかわりをもつだろう」(シュティルナー)。(3)自分の他我を認めるために、類比説では、身体、行為、言語を媒介に自我との類比から他我を構成する(フッサール)。直証説では、他我の存在は自負や恥じらいで直接に知られる(サルトル)。共同主観説は、特定の自己でない「ひと」を根本に置く(メルロ・ポンティ)。

加藤尚武

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百科事典マイペディア「独我論」の解説

独我論【どくがろん】

英語solipsismなどの訳。〈独在論〉〈唯我論〉とも。真に実在するものは自我とその意識内容だけであって,他我や物の実在を確実視することはできないという立場。西洋近代哲学の主潮流は多少とも独我論的性格を有し,バークリー,フィヒテ,前期ウィトゲンシュタイン(〈私の言語の限界が私の世界の限界である〉)らが代表者。

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精選版 日本国語大辞典「独我論」の解説

どくが‐ろん【独我論】

〘名〙 (solipsism の訳語) 自我とその意識だけが実在し、いっさいのものは、自我の意識のなかに存在するにすぎないとする立場。独在論。唯我論。

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世界大百科事典 第2版「独我論」の解説

どくがろん【独我論 solipsism】

唯我論,独在論ともいう。ラテン語のsolus(~のみ)とipse(自我)とをつないでできた言葉で,一般には自我の絶対的な重要性を強調する立場のことをいう。古くは実践哲学領域で,自己中心的もしくは利己的な生活態度や,それを是認する道徳説に対して用いられたが,今日では認識論的,存在論的な見解をあらわす言葉として使うのが普通である。すなわち全世界は自我の意識内容にほかならず,物や他我の実在を確実に認識することはできない,またそれらに自我と並ぶ実在性は認められないとする見解をいう。

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世界大百科事典内の独我論の言及

【ウィトゲンシュタイン】より

…《論考》の中核である〈像の理論〉は,要素命題の記号を言語外の対象に対応づけ,命題を事実の写像たらしめる主観の作用を暗黙のうちに前提していた。これは言語主体たる〈私〉を有意味性の根源とすることであり,そのかぎり,〈私の言語の限界〉をもって世界そのものの限界とする独我論の立場を脱することはむずかしい。後期のウィトゲンシュタインは,こういう〈私的言語〉の想定が《論考》のみならず広く哲学的な言語解釈の根源になっていることを見抜き,この想定の背理と不毛を徹底的に追及した。…

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