蕃藷考(読み)バンショコウ

デジタル大辞泉 「蕃藷考」の意味・読み・例文・類語

ばんしょこう〔バンシヨカウ〕【蕃藷考】

江戸中期の農書。1巻。青木昆陽著。享保20年(1735)刊。救荒作物としての蕃藷サツマイモ)の栽培法・貯蔵法などを記したもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「蕃藷考」の意味・わかりやすい解説

蕃藷考 (ばんしょこう)

青木昆陽が1735年(享保20)に書いたサツマイモ奨励の小冊子。当時の昆陽無名の寺子屋師匠だったが,中国本草書と西日本での風評にもとづき,サツマイモの利点13ヵ条をあげ,栽培法をのべた。大岡越前守に提出され,幕府がサツマイモを公然と奨励するきっかけをなした。また昆陽自身サツマイモ試作の現場責任者を命じられ,これに成功したことから,幕府に正式登用され,蘭学者として大成する道が開かれた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蕃藷考」の意味・わかりやすい解説

蕃藷考
ばんしょこう

江戸時代、飢饉(ききん)時の食糧不足に備えるためサツマイモ(蕃藷)の栽培を奨励した小冊子。著者は青木昆陽(こんよう)(敦書(あつぶみ))。一巻、補一巻、全一冊。本編1735年(享保20)、増補1769年(明和6)成立。本書では、サツマイモの形や味をはじめ栽培法・蔵種法について中国の本草(ほんぞう)書である『農政全書』(徐光啓著)などから抄出し、あわせて薩摩(さつま)国(鹿児島県)における栽培の実態なども述べている。またのちに、松岡恕庵(じょあん)著『蕃藷録』を参考にして訂正増補したらしい。昆陽の建策は町奉行(ぶぎょう)大岡忠相(ただすけ)を通じて幕府の採用するところとなり、昆陽自ら責任者となってサツマイモの試作に成功し、全国へ普及する端緒を開いた。本書は『三十輻(さんじっぷく)』第四巻に収める。なお、同名書に池田武紀(たけのり)著と糸川某編とがある。

[馬場 章]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「蕃藷考」の解説

蕃藷考
ばんしょこう

蕃薯考」とも。江戸中期の農書。青木昆陽(こんよう)著。救荒食料としての甘藷(サツマイモ)の効用を説いた書で,大岡忠相(ただすけ)の推挙を得て1733年(享保18)将軍徳川吉宗に呈上されたとされるが原本は不明。吉宗の命でこの書を簡略化し「薩摩芋功能書并作り様の伝」として35年刊行。種芋とともに諸国に配布し,甘藷栽培の普及に大きく貢献した。松岡恕庵の「蕃藷録」との重複部分を削除した同名異書「蕃藷考」も同年著した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蕃藷考」の意味・わかりやすい解説

蕃藷考
ばんしょこう

蕃藷すなわちさつまいもについての著書。青木昆陽がさつまいも栽培の普及を意図して享保 20 (1735) 年に完成。1巻。内容はさつまいもの形,種類,味,栽培法,貯蔵法など全般にわたっている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の蕃藷考の言及

【青木昆陽】より

…1719年(享保4)に実証的な学風で知られる京都の儒者伊藤東涯の門に学び,22年に帰府して開塾した。救荒用の作物として甘藷(サツマイモ)に注目,35年に《蕃藷(ばんしよ)考》を著して幕府に上書したところ,将軍徳川吉宗にとりあげられ,甘藷栽培の普及に大きな貢献をした。39年に書物方に挙げられ,全国諸所の古記録の調査に従事し,のち67年に書物奉行に昇進した。…

※「蕃藷考」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」