鬼一法眼(読み)キイチホウゲン

デジタル大辞泉 「鬼一法眼」の意味・読み・例文・類語

きいち‐ほうげん〔‐ホフゲン〕【鬼一法眼】

伝説上の人物。京都一条に住む陰陽師おんようじで、文武達人といわれ、所持していた兵法秘書六韜三略りくとうさんりゃく」を、源義経に盗まれた話で知られる。浄瑠璃に登場する。

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精選版 日本国語大辞典 「鬼一法眼」の意味・読み・例文・類語

おにいち‐ほうげん ‥ホフゲン【鬼一法眼】

(「法眼」は単に僧に対する敬称) 「義経記」巻二などに描かれる文武両道に秀でた僧体の人物。京の一条堀河に邸を持つ陰陽師法師という。源義経に「六韜(りくとう)三略」の兵法書を盗まれた話により知られる。彼の名を題名とする御伽草子三巻(「判官都話」とも)がある。きいちほうげん

きいち‐ほうげん ‥ホフゲン【鬼一法眼】

「義経記」などに描かれる文武両道に秀でた僧体の人物。京の一条堀河に邸を持つ陰陽師法師という。源義経に兵法を盗まれた話により知られる。おにいちほうげん。

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改訂新版 世界大百科事典 「鬼一法眼」の意味・わかりやすい解説

鬼一法眼 (きいちほうげん)

古くは鬼一は〈おにいち〉とも読まれた。義経伝説に登場する陰陽師(おんみようじ)で,六韜(りくとう)兵法を伝受していたとされる。義経はその娘の手引きでこの兵法をひそかに写しとる。《義経記》では鬼一法眼は一条堀川に住み,妹婿に北白河の印地の大将湛海がいたとされる。鬼一法眼は御伽草子《判官都ばなし》や謡曲《湛海》にも登場し,浄瑠璃では《鬼一法眼三略巻》が有名で,後に歌舞伎にも移された。また,中世陰陽道系の兵法書に四十二箇条,一巻書,虎の巻などと称されるものがあって,それらの伝来を記す中に吉備真備鞍馬の僧祐海,義経などとともに鬼一法眼の名が見える。鞍馬は陰陽道の一拠点,一条戻橋には安倍晴明伝説がある点などから,鬼一法眼伝説は陰陽師などによって伝えられ,印地の者などとも関係があったものと想像される。なお,鬼一法眼は登場しないが,義経が娘の手引きで兵法を盗むとされるものに御伽草子《御曹子島渡り》《天狗内裏》,幸若舞《皆鶴》などがある。
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朝日日本歴史人物事典 「鬼一法眼」の解説

鬼一法眼

義経伝説に登場する陰陽師。「おにいちほうげん」ともいう。実在は不明。『義経記』では,京の一条堀川に住み,天下の兵法書『六韜三略』を秘蔵している。牛若丸はそれを見ようとしたが許されず,法眼の末娘と契りを交わし,娘のはからいで『六韜』を手に入れ1字も余さず覚えてしまう。法眼は激怒し,妹婿の湛海を追っ手に差し向けたが,返り討ちにあった。娘は牛若丸と別れた悲しみのあまり死んでしまい,法眼は悲しみにうち沈む。鬼一法眼はお伽草子『判官都ばなし』や謡曲「湛海」にも登場し,浄瑠璃では「鬼一法眼三略巻」が有名で,のちに歌舞伎にもなった。

(小松和彦)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「鬼一法眼」の解説

鬼一法眼 きいちほうげん

伝説上の兵法者。
「義経記(ぎけいき)」によれば,京都一条堀川にすむ陰陽師(おんようじ)で,文武にすぐれる。牛若丸(源義経)はその娘の手引きで秘蔵の兵書「六韜(りくとう)三略」をよむことができたという。江戸時代の浄瑠璃(じょうるり)や歌舞伎などに登場し,ひろくしたしまれた。「おにいちほうげん」ともよむ。

鬼一法眼 おにいちほうげん

きいちほうげん

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「鬼一法眼」の解説

鬼一法眼
(通称)
きいちほうげん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
鬼一法眼三略巻
初演
享保16.12(大坂・嵐国石座)

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世界大百科事典(旧版)内の鬼一法眼の言及

【鬼一法眼】より

…義経はその娘の手引きでこの兵法をひそかに写しとる。《義経記》では鬼一法眼は一条堀川に住み,妹婿に北白河の印地の大将湛海がいたとされる。鬼一法眼は御伽草子《判官都ばなし》や謡曲《湛海》にも登場し,浄瑠璃では《鬼一法眼三略巻》が有名で,後に歌舞伎にも移された。…

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