アラクラン石(読み)あらくらんせき(その他表記)alacrànite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラクラン石」の意味・わかりやすい解説

アラクラン石
あらくらんせき
alacrànite

ヒ素(As)の硫化鉱物の一つ。1986年ロシアのポポーバValentina Popovaらによって、カムチャツカ半島のウゾン・カルデラUzon calderaから記載された新鉱物。As8S9という理想式が適用されたが、2003年イタリアのボナッツィPaola Bonazziらによって、β(ベータ)-As4S4とAs4S5という、かご状の分子の規則的配列によること、As4S4とAs4S5の間ではS(硫黄(いおう))の量は連続的に変化することが確認された。なおAs4S5に相当するものはウゾン石uzoniteという別鉱物となる。

 ウゾン・カルデラでは、砂質礫(れき)層の膠結(こうけつ)物質として、鶏冠(けいかん)石およびウゾン石と共存し、アラクラン鉱床では鶏冠石、雄黄(ゆうおう)(石黄(せきおう))のほか、自然砒(ひ)、アーセノランプライト、黄鉄鉱、硫砒(りゅうひ)鉄鉱、閃(せん)亜鉛鉱、針銀鉱、石英方解石、重晶石などとともに産する。日本では群馬県甘楽(かんら)郡下仁田(しもにた)町西ノ牧鉱山(閉山)から他の硫化ヒ素の鉱物とともに産する。同定は色、低い硬度などによる。鶏冠石より橙(だいだい)色味が強く、劈開(へきかい)がほとんどない。条痕(じょうこん)が実際の色と微妙に異なる。命名最初にその存在が確認されたチリのアラクランAlacrànの噴気性ヒ素鉱床にちなむ。

加藤 昭 2015年12月14日]


アラクラン石(データノート)
あらくらんせきでーたのーと

アラクラン石
 英名    alacrànite
 化学式   β-As4S4とAs8S9の両方が適用されている
 少量成分  なし
 結晶系   単斜
 硬度    1.5
 比重    3.43
 色     橙黄
 光沢    金剛
 条痕    橙黄
 劈開    一方向に不完全
       (「劈開」の項目を参照)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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