フランス語で書くスペインの劇作家。モロッコのスペイン領メリリャの生れ。スペイン内戦時共和主義者の父が,カトリック信者の母によりフランコ政権に密告されて行方不明となる悲劇的体験をもち,不条理の悪夢を根底にした独自の世界を描く。1958年,短い戯曲集《戦場のピクニック》《ファンドとリス》などを刊行するが,上演は10年後を待たなければならなかった。65年以後は,アルトーやジュネの影響の下に〈パニック演劇〉を創立。南米出身の演劇人サバリやV.ガルシアなどと協力して《迷路》《建築家とアッシリア皇帝》《自動車の墓場》(以上1967初演)など,グロテスクなバロック的儀式が観客を巻きこむ衝撃的舞台を創り出した。68年五月革命以後は,若い世代の演劇人の中心的指導者となり,《奴らは花に手錠をかけた》(1968),《悦楽の園》(1969),《ベラ・チャオまたは千年戦争》(1972)など政治的な色彩の濃い作品を発表している。
→不条理劇
執筆者:利光 哲夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…このような道化的嘲弄の世界は,初期のA.アダモフ作品や,J.ジュネの世界にも共通するものである。 60年代に入ると,前衛劇の第一線は交代し,フランスにおいては,F.ビエドゥー,R.デュビヤール,A.ガッティ,R.ワインガルテン,F.アラバルなどが輩出する。とくにスペイン領アフリカ生れのアラバルは,スペイン内戦の個人的体験と,カトリックの典礼のもつ神秘性を混交させた独自の世界を開拓し,J.ラベリ,V.ガルシア,J.サバリなど〈ネオ・バロック〉を名のる演出家たちの活動によって独自の地位を占めた。…
…しかし70年代からは〈キャフェ・テアートル(カフェ・テアトル)〉がそれにとってかわり,運動的様相は失われる。なお外国人演劇人との出会いとしては,60年代にF.アラバル作品の演出によりデビューする南米出身のトリオ,J.ラベリ(《建築家とアッシリア皇帝》),J.サバリ(《迷路》。のちには〈グラン・マジック・サーカス〉を組織),V.ガルシア(《自動車の墓場》。…
※「アラバル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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