①の例「霊異記」の「噫乎」は、「アア」と読む可能性もある。
五十音図第1行第1段の仮名。平仮名の「あ」は「安」の草体から、また、片仮名の「ア」は「阿」の偏から変化してできたものである。万葉仮名では「阿、安、婀、鞅(以上音仮名)、足(訓仮名)」などが使われた。ほかに草仮名としては「(阿)」「(愛)」「(悪)」などがある。
音韻的には、5母音の一つ/a/にあたる。東京語などでは、奥舌の[a]よりもやや舌が前寄りで、口の開きの大きい中舌広母音である。ア段長音の引き音節部分を、「おかあさん」「おばあさん」などのように表しもする。また表記上はアであっても、音の連なり方によって、「ピアノ→ピヤノ」「バアイ(場合)→バヤイ/バワイ」「オンアイ(恩愛)→オンナイ」などと発音されたりする。
なお「阿吽(あうん)の仁王」「阿吽の呼吸」などと使われる「阿吽」の「阿」は、悉曇(しったん)十二母音の初音で、物事の初めの意で用いられ、口を開いた形相や吐息をも表す。
[上野和昭]
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